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道化の国
罪の意識1


ゆっくりとした時の流れはユリアの心と身体の傷を癒す。

傷ついたのは何もユリアばかりでなく、マスカーレイドも一緒だった。
自分の至らなさを胸に深く刻み、取り戻せない過去を自分に戒めた。

それを知ってか知らずか、事ある毎にセンリと美咲はマスカーレイドのフィールドに姿を現す。
明るい話題を振る美咲にマスカーレイドは励まされ、ユリアはマスカーレイド以外の男にも少しずつではあるが嫌悪の色を薄れさせてゆく。


マスカーレイドを取り巻く生活に慣れ、初めて出逢った頃とは見違えるほどの眩しい笑顔をユリアは見せるようにまでになっていた。


「ユリア、何処か行きたい所ある?」

「いいえ、マスカーレイドさんが居てくれれば、私はそれで・・。」


少し俯き加減で囁くように答えたユリアは頬を赤く染め、そんなユリアを見たマスカーレイドは今までにないときめきをユリアに感じていた。


「そんな事言われると、益々何かしてあげたくなる。もっと我侭言って?俺に出来る事なら、何だってしてあげる。」

「・・・じゃあ少しだけ、散歩・・してみたいです。美咲さんから聞いたんです。美咲さん、センリさんとよく散歩しに行くって。・・・私も、してみたいです。」

「そう・・、わかった。じゃあ、これから行こっか。」


絡められた指を恥かしそうに見つめ、ユリアは幸福な気持ちで一杯になっていた。

申し訳ないと心苦しさを感じるほど自分を気遣ってくれる優しい仲間や、自分を最優先に考えてくれるマスカーレイドに心から感謝してもしきれないこの気持ち。
自分でも描いた事のないシナリオはとても明るく、希望に満ち溢れていた。


久しぶりに出たフィールド外。
ユリアにとってあまり良い思い出のない場所ではあるが、今は隣にマスカーレイドの存在がある。
それだけで嫌な気持ちを吹き飛ばしてしまうほど、心穏やかでいる事が出来た。

しかし拭いきれない思いは僅かではあるが、頭の端に残る。


「幸せすぎて、怖いです。・・・こんな気持ちに浸っていたら、何か悪い事が起こるんじゃないか、・・・心配です。」


苦笑いを向けるユリアに、マスカーレイドは小さく微笑みかけた。


「こんな事で幸せだなんて思わないで、・・・ユリアはもっと幸せになるんだ。俺が・・・もっと幸せにしてあげる。」

「マスカーレイドさん・・。」


甘い言葉を与えられ、ユリアはマスカーレイドの声に陶酔し身体を預ける。

甘えられる事がこれほど幸福感に包まれるものなのかと、マスカーレイドはユリアからもたらされる事全てに驚きを隠しえなかった。
そしてお互いが、かけがえのない存在になっていった。


「もう新しい男に捕まったのかよ。」


見知らぬ男の声に、幸せそうだったユリアの表情が強張る。
そしてその男に視線を移したユリアは、一瞬にして顔を青褪めさせた。
カタカタと身体を震えさせ、マスカーレイドと繋いだ手をきつく締める。

突然の豹変振りに驚いたマスカーレイドは、下品な笑みを浮かべる男をきつく一瞥した。



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あきゅろす。
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