道化の国
白いシーツ
情事を終え、うとうととまどろんでいた美咲をベッドに運ぶ。
気持ち良さそうに眠る美咲を見て、自分の心までもが穏やかな風に包まれる様な気持ちにさせられる。
スプリングを軋ませベッドに腰を下ろしたセンリは、静かに息を漏らした。
「美咲の事となると、とてもではありませんが・・広い心は持てません。私は器の小さい男ですね。」
自嘲するセンリは眠る美咲の頬に手を滑らせ、柔らかな感触を味わう。
心の内を語るセンリは吐露する事で、美咲に対しての後ろめたい心苦しさを紛らわすしか出来ないでいた。
「意識の在る美咲にも謝りたいのですが・・、どうしても言えません。本当に情けないです。」
ため息を吐くセンリはゆったりとした動作で美咲から視線を逸らし、足を組み替えた。
視線の先には蝋燭が微かに揺らぎを見せ、その光がセンリの心を温かく照らす。
「貴女には私の醜い心を見せたくありません・・。ですから・・、眠る美咲に許しを乞う事・・・これが私の精一杯です。」
背中を向けたままに語るセンリに美咲は寝返りを打ち、腰を下ろしていた隣に投げ出された手を見つけた。
センリはその体勢のまま美咲の手に自分の手を重ね体温を感じる。
「情けない私を見せて捨てられたくはありません、・・しかし手放すつもりもありませんけどね。」
繋いだ手をゆっくりと握り、センリは含むように笑って後ろに振り返った。
安らかに眠る美咲に顔を近づけ、頬に唇を落とす。
「これで私の懺悔は終りです。目覚めたらいつもの様に、私に微笑みかけてくださいね美咲。」
何処かスッキリとした様子でセンリは立ち上がり、繋いでいた手を名残惜しそうに解いた。
「・・・・あとはマスカーレイドですか・・、これから一波乱あるかもしれませんね・・・。」
ふと漏らした呟きは扉を閉める音に掻き消され、静かな部屋に残るは美咲の寝息だけ。
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