道化の国
エメラルドの意味3
「マリカにも教えます、・・・では後ほど。」
薄く笑みを見せるセンリはマスカーレイドを一瞥する。
「もう良いよ、俺だけ抜け者で。・・・あ、そうそう。ユリア、マリカには初めて会うよね?」
「マリカよ、よろしくね。」
強烈なパワーを秘めたマリカに多少気圧されるが、差し出された手におずおずと手を出し握手を交わした。
「ユリアです、よろしくお願いします。」
「マリカは怒らせると凶暴になるから、気をつけてね。でも・・怒らせなくても、怖いけどね。」
ユリアに耳打ちをするマスカーレイドは、マリカにも聞こえるほどの声量で話す。
聞き逃す事のない言葉に、マリカは静かに怒りを露にした。
先ほどまで見せていた大人びた態度から一転して、静かな怒りを顔に出していた。
「・・・ユリアがいるから今は何もしないけど、・・・後で覚えてらっしゃい。」
恐ろしいまでの笑みを見せ、マリカは顔を引きつらせる。
それを横目で見ていた美咲は苦笑いをユリアに向けた。
「ユリアはマスカーレイドをどう思う?」
「どうって・・・。」
ふと投げかけられた言葉に、ユリアはマスカーレイドを見上げ顔を綻ばせる。
見つめられたマスカーレイドは口元を緩ませ、その答えを聞きたそうに首を傾けた。
「私は・・、マスカーレイドさんが好きです。私の居場所だと初めて思えるほどに・・、とても好きです。出逢って間もないのはわかりますけど、そんなの関係ないくらいに・・。」
「俺もだよ。ユリアがそこまで思っているなんて考えてなかったから、感激だよ。」
人目をはばからず熱い抱擁を見せる二人に、美咲は恥かしく思い頬を染めながらも微笑ましく感じた。
「じゃれ合うのは私達が帰ってからでも、たっぷりとしてください。」
「いつも自分達がしてるくせに。」
ユリアを抱き締めたまま顔だけをセンリに向けるマスカーレイドは、口を尖らせて不満を漏らす。
「じゃあそろそろ帰ろうか、・・センリ、顔が険しくなってる!マリカも帰ろう?」
面白くなさそうに眉を寄せるセンリの腕を引っ張り、マリカにも帰る事を促す。
「そうね。マスカーレイド、お邪魔になると悪いから私達は帰るわね。」
「ユリアも一緒に送ってく?」
立ち上がるマスカーレイドはユリアに声をかけると嬉しそうな顔で頷き、ユリアはマスカーレイドの手を握ったまま立ち上がった。
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