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道化の国
エメラルドの意味2


「元気だった?」

「はい、大丈夫です、ありがとうございます。美咲さんもお変わりないようですね。」


ユリアは美咲に握られている右手に左手を重ね、しっとりと落ち着いた声で声をかけた。
ゆっくりと穏やかな口調のユリアに満足そうに頷き、美咲は重ねられた手に違和感を感じ視線を落とした。


「・・・ユリア・・、この指輪・・。」

「これ・・・、ですか?」


美咲が指差す方向、ユリアの左手に深い色合いのエメラルドが輝いている。
頬を染めるユリアは左手を胸に当て、後ろにいるマスカーレイドに微笑みかけた。


「契約したんだ。立ち話もなんだから座ろうよ、センリ達も待ってるからさ。」


マスカーレイドの一言で、我に返ったユリアと美咲はソファにいるセンリ達を振り返った。
苦笑いを浮かべるセンリは自分の隣に来るよう手で促していて、美咲は緩みっぱなしの表情をしたまま足を進め伸ばされた手に腕を取られて隣に腰を落ち着けた。

ユリアは初めて見るマリカに軽く会釈をし、マスカーレイドにソファへと誘導される。
座ったと同時に、マスカーレイドはユリアの左手を持ち穏やかな笑みを見せ薬指を撫でた。


「これ、エメラルドだよね。」

「そのようですね。・・・マスカーレイドの気持ちが良くわかります。」


マスカーレイドの呟きをセンリが拾い上げ、返答する。


「新たな始まり、希望と言ったところでしょうね。」

「ユリアのエメラルドにはそんな意味があるの?」


興味深げにセンリを窺う美咲は、嬉しそうに聞いてくる。


「心の安定・・・他にもありますが・・、それはあとで美咲にだけコッソリ教えてあげますね。」


センリは人差し指を唇に寄せ、悪戯に微笑む。
他にどのような意味があるのかと、美咲は笑顔で頷いた。

二人のやり取りを見ていたマスカーレイドが口を挟む。


「ちょっと、他に何の意味があるんだよ。」

「今は・・・言えません、美咲と私だけが知っていれば良いかと思いますし。」

「あら、私には教えてくれないのかしら?」


ソファにもたれるマリカは腕を組んでセンリを横目に視線を送った。



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