道化の国
エメラルドの意味1
フィールドに着くとそれぞれソファに腰を下ろした。
場繋ぎとばかりにマスカーレイドが紅茶と小さなガラスの壷を並べる。
透明な壷には色とりどりの可愛らしい砂糖菓子が詰まっていて、テーブルにあるだけで目を楽しませてくれた。
目の前に出されたカップを手に取り、各々が紅茶の香りや味を楽しみ一息つき静かにその時を待つ。
一人心を落ち着かせない美咲はそわそわとしている。
そんな美咲に笑みを零し、センリはカップをソーサーに戻した。
「今からその調子では、後で疲れますよ。」
「だって・・。」
口を尖らせセンリに眉をしかめてみせる美咲は小さく息を吐く。
「ゆっくり待ちましょう、これからはいつでもユリアに会う事が出来るのですから。」
「・・・そうだね、うん。」
ユリアに会う事を心待ちにしている美咲を微笑ましく思うマスカーレイドは物音に気付き、スッと立ち上がった。
「ユリアが起きたかも、ちょっと行ってくる。」
その場を後にするマスカーレイドの背を見送り、美咲の表情が生き生きとしてくる。
落ち着きのない雰囲気を保つ美咲はマスカーレイドが出て行った扉を見つめ、開く時を今か今かと待ち構えている。
重なる足音が近付き、扉がゆっくりと開いた。
「おいで、ユリア。」
先に入ってきたマスカーレイドに背を押され、おずおずとした様子でユリアが顔を覗かせた。
少しばかりぼんやりとした瞳をしたユリアが美咲を見つけると、頬を上げて口を開いた。
「・・美咲さん。」
「ユリア!」
立ち上がった美咲はユリアのもとへと駆け出し、儚げな笑顔を向けるその人に頬を緩ませた。
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