道化の国
願う心
「センリ・・。」
「どうしました?」
口重そうに話す美咲に、センリは肩を抱き寄せて問いかける。
抱き寄せられた美咲は唸って何かを言いたそうにするが、言葉にならないのか話そうとしない。
「マスカーレイド達が気になりますか?」
「うん・・。大丈夫かな・・・?」
「大丈夫ですよ、マスカーレイドに任せておいて問題はないです。」
「ユリア・・・、元気になると良いね。」
ぽつりと零す美咲にセンリは笑みを漏らし、額に唇を落とす。
「きっとマスカーレイドが元気付けています、ですから大丈夫ですよ。落ち着いたらマスカーレイド達と会いましょうか。」
「うん・・。」
美咲はセンリの背中に腕を回し、大きく息を吸い込んだ。
初めて見た自分以外の希望の光の行方が気になり、重くなっていた心がセンリの一言一言で救われる。
ユリアの怯えたあの瞳が美咲の脳裏に過ぎり、その悲しみの深さを感じ取る。
希望の光として望まれ、そしてその穏やかな空気を味わってもらいたい。
辛い環境から一転して目に見える幸せを、一刻も早く。
自分が今包まれているこの環境にこの上ない幸せを感じつつ、ユリアも早く安堵する場所を知ってもらいたいと願っていた。
いつも幸せをもたらしてくれるセンリの腕に顔を寄せ、滲みそうになる視界を閉ざし背中に回した腕を強めた。
「美咲?」
「ずっとこのまま・・、抱いていて・・・。」
「・・・良いですよ、お望みと在らばいくらでも。」
僅かに鼻にかかった声に気付き、センリは美咲を抱き上げ膝の上に乗せた。
「全てを包み込んであげます。」
伏せられた瞳に光る雫を指で拭い、広い胸に美咲の身体を寄せた。
身体を預ける美咲の瞳に留めておけておけなかった涙は、センリの白いシャツに全て吸い取られていった。
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