道化の国
眠り姫
眠りから目覚めると、いつも隣りで寝息をたてている眠り姫。
この寝顔が見たいが為に、美咲より遅く眠り、早く目覚めるのが日課になっていた。
“愛しい”を形にしたら、きっと美咲になるのだと思う。
独りぼっちだった頃は、時間の流れがゆっくりな事が疎ましく思っていた。
美咲と出会えてからは、ゆっくりとした時の流れが、永遠に続けば良いとさえ思える。
私達に与えられた希望の光とは、側にいるだけでこんなにも満たされるものなのだろうか。
美咲の顔にかかる髪を払い、白い肌に薄く桃色付いた頬に指を這わせ、そのまましっとりと紅く濡れた小さな唇に触れる。
眠る美咲にソッと唇を寄せた。
目の前には、固く閉じられた瞳。
長い睫が縁取られている。
愛しいと思えば髪の毛一本、睫の一本でも失いたくないと、美咲の身体をなぞる。
悪戯が過ぎたようで、美咲の大きな瞳がゆっくりと開いた。
「おはよう、美咲」
「…ん、おはよ」
まだ寝ぼけ眼な美咲は瞳を閉じ、私の胸に顔を埋める。
柔らかな髪が私の肌を掠め、気持ちを昂ぶらせる。
「美咲はいけない子ですね」
美咲は瞳を閉じたまま、何の事?と相変わらず胸に顔を擦り寄せる。
「わからないのなら、教えてあげます」
美咲の白く細い指に私の指を絡ませ、唇を重ねた。
貴女の言葉や仕草一つで、鼓動は早鐘を打つ。
私を惑わす愛しの眠り姫。
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