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道化の国
慈しみと拒絶4


バスローブに包まれたユリアは湯気を纏い、何処か上の空でマスカーレイドを見つめる。


「・・・どうしたの、ユリア。」

「マスカーレイドさん・・・服・・濡れてます・・。」

「あぁ、気にしなくて良いよ。俺も後でシャワー浴びるし。」


さして気にした様子のないマスカーレイドはユリアの髪を真新しいバスタオルで包み、優しく水気を切る。


「じゃあ俺もシャワー浴びるから、リビングで少し待ってて。すぐ行くから。」


マスカーレイドは濡れて肌に張り付く衣服を難儀そうに脱いで、バスルームへと入っていった。


手早くシャワーを済ませたマスカーレイドは、ユリアがいるリビングへと足を速めた。
扉を開ければ、ユリアはソファで膝を抱え小さくなって座っている。

僅かに見せる寂しそうな表情は、マスカーレイドが戻った事で一変する。


「マスカーレイドさん!」

「ごめん、お待たせ・・・ッ!?」


バスローブが肌蹴るのも厭わず、ユリアは駆け足でマスカーレイドに近付き抱きついた。


「どうしたの・・、寂しかった?」

「はい・・・、迷惑・・ですか・・?」


不安そうな瞳が一瞬だけ揺らぎ、そしてゆっくりと閉じられる。
マスカーレイドの存在を確かめるように胸に顔を、埋め抱き締めた腕の力が微かに強まる。


「迷惑じゃない、・・嬉しいよ。」


微笑むマスカーレイドはユリアの額に唇を寄せ、まだ乾ききっていない深緑の髪に指を絡めた。
安堵するユリアは大きく息を吸い込み頬を緩めた。


「疲れたでしょ、一眠りする?」


頭上から降りそそがれた言葉にユリアは頷き、立ち止まっていた足をマスカーレイドに促されベッドルームに向かっていった。


寝かしつけながら隣でうとうととするユリアに、マスカーレイドの瞼も重くなってくる。


「・・・マスカーレイドさん・・、おやすみ・・・なさ・・い・・・。」

「ん・・、おやすみ・・。」


女と一緒に眠って身体の関係がないといった事は一度としてないマスカーレイドだが、さしてそれは気になる事が全くなかった。
言いようのない穏やかな気持ちに包まれ重くなる身体はベッドに沈みこみ、二人は寄り添うようにして眠りについた。




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