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道化の国
慈しみと拒絶2


マスカーレイドの話を驚いた様子で聞き入っていたユリアは、真っ直ぐな視線をマスカーレイドに向けた。


「その・・希望の光が・・、私・・ですか?」

「俺も今までに感じた事のないものをユリアに感じる。それにユリアは俺の香りに反応を示した。俺の香り・・どんな感じだった?」


ユリアはマスカーレイドの問いに微笑し、両手を合わせ優しく握り締めた。


「・・今にも蕩けそうなくらい甘くて・・、もっと欲しくなるような・・そんな香りです。今も・・マスカーレイドさんに側に居てもらいたくて・・、離れたく・・ないです・・。」

「やっぱり君は俺の希望の光だよ、俺だけの・・希望の光・・。」


ユリアを抱き寄せ、自分の腕に閉じ込めた。
今までにない幸福感で満たされたマスカーレイドは、ユリアの緩く波打つ深い緑色の髪に顔を埋めた。


「俺だけのユリア・・。」


マスカーレイドの香りに酔いしれるユリアはゆっくりと瞼を閉じ、その香りに包まれ安堵の息をついた。


暫しの間、互いに抱擁を楽しみ、ゆっくりと身体が離される。


「ユリア、お風呂・・・入る?・・でも傷に沁みるかな?」


先ほどまでマスカーレイドに寄り添い穏やかな表情でいたユリアに緊張が走る。
それまであった顔は何処にもなく、血の気が引き青褪めた顔のユリアが目を泳がせている。


「ユリア・・?」

「イヤ・・、・・・・私・・・・私・・・。」


突然の豹変振りにマスカーレイドは面くらい、曇るユリアの表情を凝視した。


「どした・・・。」

「私・・・汚い・・・、マスカーレイドさんまで・・・汚くなる・・。」


ユリアは勢いよく立ち上がり、マスカーレイドの腕から離れた。
拒絶するように胸を押しのけ、ユリアは泳がせた視線をマスカーレイドに向けようとしない。


「私・・・汚れてる・・・、たくさんの・・男に・・・・いや・・・。」

「大丈夫だからユリア、落ち着いて。」


自分の失言のせいで忌まわしい記憶が蘇らせてしまった事を深く後悔し、取り乱したユリアを強引に腕の中に収める。
暴れる手を胸に押し込め、優しく抱き締める。



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