[携帯モード] [URL送信]

道化の国
慈しみと拒絶1


ユリアが落ち着きを取り戻したのを見計らい、マスカーレイドはセンリ達をフィールド外まで送りユリアの待つ方に踵を返した。
今はユリアの側から離れる事がとても苦痛に感じられ、逸る想いは足を急がせる。

一人の女に依存した事のないマスカーレイドにとって、ユリアに抱く感情は全てが初めてだった。
当然のように困惑するものの、しかしそれは心地良いものであったため、自然と頬が緩んでいく自分がいることに可愛いとさえ思えた。

まだ自分にはこんな純粋な部分があったのだと、驚きながらも嬉しくも思えていた。


「ただいま、ユリア。」

「・・・ぁ、おかえりなさい。」


マスカーレイドがフィールドに戻れば、沈んでいた様子のユリアの表情が一気に華やぎ、返事を返した。


「隣、座っても良い?」

「あの・・・、・・はい・・。」


少しばかり染められた頬を見て、マスカーレイドは苦笑しながら腰を下ろした。
もじもじとするユリアに、どうしたのだろうと顔を覗き込む。


「何?」

「あの・・、マスカーレイドさん・・、その・・。」

「どうしたの?」

「・・・だ・・抱いて・・・もらえますか?」


ユリアの言葉に大きく動揺するマスカーレイドは、恥かしそうに俯くユリアに息を呑んだ。


「私・・・あの・・そうじゃなくて・・・、マスカーレイドさんに・・。」

「ん、わかった。全部言わなくてもわかるよ。おいで、ユリア。」


もじもじとしたまま、ユリアは広げられたマスカーレイドの腕にふわりと飛び込んだ。


「私・・マスカーレイドさんに抱き締めてもらうと・・、とても安心出来るんです。とても・・・気持が・・良いんです・・。」

「・・・・・抱っこ?」

「・・・は・・い・・・・。」

「ユリア・・・?」


頬を染めるユリアは心から嬉しそうな顔で、不意打ちを食らったマスカーレイドを見上げた。


「抱っこ・・してもらいたかったの?」

「・・・・はい・・。」


淡い期待は見るも無残に砕け散るが、ユリアの笑顔を見れたマスカーレイドはそれだけでも十分満足だった。


「ユリア・・、これから君の存在、希望の光の説明をするね。」


胸に顔を寄せているユリアは小さく頷き、それを確認したマスカーレイドは優しく一つ一つ丁寧に説明していった。



[*前へ][次へ#]

8/52ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!