道化の国
慈しみと拒絶1
ユリアが落ち着きを取り戻したのを見計らい、マスカーレイドはセンリ達をフィールド外まで送りユリアの待つ方に踵を返した。
今はユリアの側から離れる事がとても苦痛に感じられ、逸る想いは足を急がせる。
一人の女に依存した事のないマスカーレイドにとって、ユリアに抱く感情は全てが初めてだった。
当然のように困惑するものの、しかしそれは心地良いものであったため、自然と頬が緩んでいく自分がいることに可愛いとさえ思えた。
まだ自分にはこんな純粋な部分があったのだと、驚きながらも嬉しくも思えていた。
「ただいま、ユリア。」
「・・・ぁ、おかえりなさい。」
マスカーレイドがフィールドに戻れば、沈んでいた様子のユリアの表情が一気に華やぎ、返事を返した。
「隣、座っても良い?」
「あの・・・、・・はい・・。」
少しばかり染められた頬を見て、マスカーレイドは苦笑しながら腰を下ろした。
もじもじとするユリアに、どうしたのだろうと顔を覗き込む。
「何?」
「あの・・、マスカーレイドさん・・、その・・。」
「どうしたの?」
「・・・だ・・抱いて・・・もらえますか?」
ユリアの言葉に大きく動揺するマスカーレイドは、恥かしそうに俯くユリアに息を呑んだ。
「私・・・あの・・そうじゃなくて・・・、マスカーレイドさんに・・。」
「ん、わかった。全部言わなくてもわかるよ。おいで、ユリア。」
もじもじとしたまま、ユリアは広げられたマスカーレイドの腕にふわりと飛び込んだ。
「私・・マスカーレイドさんに抱き締めてもらうと・・、とても安心出来るんです。とても・・・気持が・・良いんです・・。」
「・・・・・抱っこ?」
「・・・は・・い・・・・。」
「ユリア・・・?」
頬を染めるユリアは心から嬉しそうな顔で、不意打ちを食らったマスカーレイドを見上げた。
「抱っこ・・してもらいたかったの?」
「・・・・はい・・。」
淡い期待は見るも無残に砕け散るが、ユリアの笑顔を見れたマスカーレイドはそれだけでも十分満足だった。
「ユリア・・、これから君の存在、希望の光の説明をするね。」
胸に顔を寄せているユリアは小さく頷き、それを確認したマスカーレイドは優しく一つ一つ丁寧に説明していった。
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