道化の国
不透明な存在2
「他の女と遊んでいる間に、ユリアは他の男に凌辱されてたかと思うと・・・、俺は・・・、自分で自分の希望の光を傷付けて・・。」
「それは仕方ないよ!だって・・、希望の光は見つかるかもわからないんでしょう?それなら・・・。」
言い様のない後悔の念にかられたマスカーレイドを救いたい美咲は声を荒げ、気落ちのした顔を覗き込んだ。
しかしマスカーレイドは美咲と目を合わそうとはせず、握っていた手に力を入れた。
「でも、良いのかしら?ユリアを置いてきて、いつ起きるかわからないんじゃない?マスカーレイド、こんな所でグズグズしていないで、フィールドに戻った方が良いわ。」
「・・ん、まぁそうなんだけど・・、ユリアにどうして接したら良いのかわからなくてさ・・・。」
マリカの問い掛けにもマスカーレイドは顔を上げる事が出来ないでいて、言葉尻を小さくしていった。
「呆れた、プレイボーイの名は伊達じゃないのに、何をもたもたしているの?優しい言葉をかけてやれば良いじゃない、簡単な事よ。」
「上辺だけ取り繕った言葉なら、いくらでも言える。けど、ユリアにはそんな中身のない言葉はかけたくない。」
「面倒ね・・・。」
片眉を吊り上げるマリカは怪訝な顔をするが、意気消沈なマスカーレイドを相手に追い討ちをかけるような事が出来ない。
いつもであれば渇を入れている所だが、それすら戸惑うほどマスカーレイドの深い悲しみが伝わってきていた。
「俺一人だと、ちょっと・・、だから美咲・・借りて良い?美咲ならユリアも怖がらないでいるかもしれない・・・、同じ女の子だし何より希望の光だし。もし、ユリアが希望の光なら何か通じ合えるんじゃないかって思って。」
「私は全然構わないけど・・。センリ、私そのユリアに会ってみる、良い?」
「・・・嫌です・・とは言える状況ではないですし、良いですよ。」
「うん、ありがとう。じゃあマスカーレイド・・・。」
了承を得た美咲はマスカーレイドに視線を送り、先を急ごうと促す。
「但し条件があります。」
美咲と共に立ち上がろうとするマスカーレイドに顔を向け、センリの声がそれを引きとめた。
「私も同行します。」
「まぁ・・・、別に良いけどさ。・・ユリアが怯えると悪いから、センリは離れててよね。・・・マリカは次の機会にしてくれる?いきなり大勢の人間を前にしたら、ユリアが驚いちゃうかもしれないし。」
「いいわ、何かあったら私にも教えて。」
「では行きましょうか。」
センリの言葉に皆は頷き、フィールドを後にした。
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