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道化の国
虚脱と狼狽と怪訝


フィールドに戻ったマスカーレイドは、ユリアをベッドに寝かせると濡れたタオルで汚れた顔を拭いてやる。
擦り傷に触れぬよう、丁寧に優しく。

今にも壊れそうなガラス細工を扱うように、マスカーレイドは時間をかけてユリアを介抱する。
見える部分だけでもと手足に着いた泥を落とすと、小さくため息を漏らした。


「・・・ユリア、すぐ戻ってくるからね。ちょっと待ってて・・・。」


離れがたい気持ちを抱えたマスカーレイドはそう呟くと、ユリアの髪を優しく撫でベッドルームを後にした。

フィールド外へ出るとすぐにマリカを呼び寄せ、言葉少なくセンリの元へ連れて行ってくれるよう頼んだ。
いつもと様子の違うマスカーレイドに首を傾げるが、マスカーレイドは何も言おうとせず、ただ、センリのフィールドに言ったら詳しい話をすると、それだけ言うとまた押し黙ってしまった。



「いらっしゃい。」

「美咲、久しぶり。元気だった?」


マリカ達が遊びに来てくれた事が嬉しく、美咲はマリカに抱きついた。
そんな美咲を抱き留め、マリカは微笑む。


「ん、元気。マリカは何も変わりない?」

「・・・それがねぇ・・・。」


マリカは美咲から視線を外し、マスカーレイドに目を向けた。


「マスカーレイド・・、どうしたの?元気がなさそう・・。」

「此処に来たら話すって言って何も話してくれないのよ・・、一体どうしたのかしら・・。そう言えばセンリの姿が見えないけど、センリは何処にいるの?」

「センリは調べ物があるからって、書斎にこもってるの・・、待ってて、今呼んで来る。」


何処か虚ろな瞳を投げるマスカーレイドを横目に、何か胸騒ぎを感じた美咲は急いでセンリを呼びに行った。


一人静かにページを捲るセンリはパタパタと美咲の足音が近付いてきたのに気付き、扉に視線を向けると勢いよく開かれた。


「センリ、ちょっと良い?」

「どうしました?」

「マスカーレイドの様子が変なの。」

「彼が変なのは今に始まった事では・・。」


至極真面目な顔でセンリは答えると、美咲はセンリのもとに近寄り持っていた本を取り上げ腕を掴んだ。


「もう!今は冗談を言ってる場合じゃないの、お願いだからちょっと来て。」

「冗談ではないのですが・・、どうしたのですか?」


センリは美咲に引きずられるように書斎から出ると、皆の集まるリビングへと連れて行かれた。



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