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道化の国
動く歯車2


助けを求める声がマスカーレイドの耳に届き、視線を女に向けるとジッと見つめられていた事に気付く。
女は涙を流し、声をなくして泣いている。


「嫌がってるみたいだし、もう離してあげても良いんじゃない?」

「この女は俺が捕まえたんだ、だから俺が何をしようと勝手だ!」

「でもさ、その娘は助けてって言ってるんだもん。女の子には優しくしてあげなきゃ・・・って、あんまり偉そうに言えないけどさ。」


マスカーレイドの台詞に険しい顔付きになる男は、拳を握り突如殴りかかってきた。


「ったく、面倒だなぁ・・・。」


マスカーレイドはサッと避け、カードケースから二枚のカードを取り出し男に向けて風を切る様に放った。


真直ぐに飛び込んできた一枚のカードを避けた男は余裕の笑みを見せると、首に焼けたような鋭い痛みを感じ呻きを上げた。

見えていた一枚にばかり気を取られていた男は、弧を描いて背後に周ったカードに気付いていなかった。


「こんな小手先の子供だましに引っ掛かるとは思わなかったよ。」

「く・・、野郎ッ・・・。」


滴る血が首筋を流れ、その傷口を手で押さえる。
怯む様子を見せない男は、ギラついた怒りを露にしマスカーレイドを睨んだ。


「もう諦めなよ、さっさと何処か行ってよね。」


面倒臭そうに言い放つと、マスカーレイドはカードをまた取り出した。

カードが宙で弧を描き手元に戻る動作を数回繰り返すと、僅かに伏せられた瞳が鋭くなり男を強く睨んだ。
マスカーレイドは男に向けて先ほどとは違う素早い動きでカードを放った。

あまりの速さに身動きの取れなかった男の頬はザックリと切れ、血が頬を伝い顎先に落ちてゆく。
力の差を見せつけられた男は血の気が失せた顔で、逃げるように走り去って行った。


「はぁ、疲れた。・・・大丈夫・・・・な訳ないか。歩ける?」


マスカーレイドはグッタリと壁にもたれる女に手を伸ばし触れようとすると、途端に女の様子がおかしくなる。

血色の悪かった女が、息を荒くし顔を赤らめている。
驚いたマスカーレイドは出した手を引っ込め、思わず後退して女の様子を窺う。


「・・はぁ・・・ぁ・・。」

「え、・・・何?どうした・・・・の・・。」


潤んだ瞳は先ほどと違い、恐れからではない恍惚とした表情に一変している。
アルコールに酔った風の女は、うっとりとした様子で瞳を閉じ何かに酔いしれていた。




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あきゅろす。
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