道化の国 全ては貴女のために 幾度となく絶頂へと導かれ、美咲の身体が限界に達した頃、センリは漸く美咲を解放した。 気を失ったように眠る美咲を抱き寄せ、センリは満足そうにして深い眠りについた。 気だるい身体が眠りから覚め美咲が瞳を開くと、目を細めたセンリと視線が交わる。 「センリ・・。」 「身体は大丈夫ですか?・・・少々無理をさせてしまいましたね。」 美咲の身体を労わるように、センリの手が美咲の身体を撫でる。 「だいじょう・・ぶ・・・。」 「そうですか、・・・つい無茶をしてしまいました。すいません、美咲。」 まだ眠たそうにする美咲は目を擦り、センリに抱き寄せられるまま胸に顔を埋めた。 「・・・初めてですよ、あの様に誰かの色恋にあれほど首を突っ込んだ事は。」 「何の話・・?」 「白露と花月の二人の事です。」 「・・でも倭の国に行った時・・だって・・。」 美咲はセンリの声を頭上に聞き、心地良い声の響きにうっとりと目を細める。 センリの鼓動が頬に感じ、美咲の心音と同調する。 「あれは巻き込まれた・・と言った方が正しいです。今回は美咲のために骨を折りました。」 「私の・・・ため?」 「貴女は倭の国での一件を忘れたのですか?」 少し考えるように押し黙る美咲に、センリは美咲の髪を撫で唇を落とす。 「私はお預けをされたのですよ?」 「おあ・・・ずけ・・・。」 「あのような思いは二度としたくなかったので、今回は積極的に動いたまでです。」 センリの声が徐々に遠くなり、美咲はセンリの体温を感じながらまた寝息を立て始める。 眠気に負けた美咲はセンリの言いたい事など理解する暇なく、その思考は閉じられてしまった。 「美咲の側にいるため、ですよ・・・。全ては貴女のために・・・。」 センリは無防備に眠る美咲の頬に唇を寄せ、優しく微笑んだ。 [*前へ][次へ#] [戻る] |