道化の国
気持ち2
「俺に抱きつかれただけで、花月は怯えてしまう。だから俺は何も言えなかった。」
身体を離し真っ赤に染め上げる頬を指先で辿り、手を下ろす。
「悪かったな、怖い思いをさせてしまって。」
何も言えず固まったままの花月に僅かに笑みを見せ、白露は立ち上がると扉に向かって歩いていった。
「俺達は昔に・・・、倭の国の次期当主と、一介の側用人に戻った方が懸命だ。元に・・・戻ろう・・・。」
「・・・いや・・だ・・、嫌だ白露!」
部屋を出て行こうとする白露に、花月はワンピースの裾を翻し駆け寄る。
「わたくしは白露になら何をされても良い!わたくしは白露じゃないと駄目なんだ!だからそんな事言わないでくれ・・、勝手に決め付けないでくれ・・・。」
「花月・・・、しかし、お前は嫌いだろう?・・ああ言った行為は・・・。」
背中に花月を感じ、白露は足を止め扉から手を離した。
「白露がわたくしから離れてゆく事の方がよっぽど嫌だ!それに・・・・白露以外とじゃ・・・嫌だ・・・。」
腕の力を強め、花月は涙で濡れる顔を白露の背中に押し付ける。
「・・俺はお前を大事にしたい・・、しかし本能のままにいけばお前を壊してしまいそうなんだ。花月を前にすると、俺の理性は何処かに簡単に吹き飛んでしまう・・。」
「白露になら壊されても良い、離れるくらいなら壊されてしまった方がよっぽどマシだ・・・。」
白露は後ろから伸びている花月の震える小さな手を包み込んだ。
「・・本当に良いのか?」
「何度も聞くな!・・・良いって言っただろ、わたくしは白露になら・・・・ッ!?」
花月の手を剥がしたと同時に、白露は振り返り花月に唇を重ねた。
驚いた花月は思わず手を振り上げるが、白露の手がそれをやんわりと阻止する。
初めての口付けに戸惑いと、形容しがたい甘さが花月の脳内を支配する。
腰砕けになる花月は立っていられなくなり、その場に落ちそうになると白露によって支えられた。
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