「期待してるわよ。じゃあ私は捻くれ屋を、手当てしてやろうかしら」 笑うマリカは、ユーマに近寄ると乱暴に頭を叩きつけ起こす。 「いつまで寝てるのかしら?手当てしてあげるから起きなさい」 「……いってぇ!!マリカもっと優しく扱え!って、あちこち痛ぇ…あれ?俺……センリに負けたのか?」 這いつくばっていたユーマが、飛び上がるように起き、早々にマリカに毒づく。 「まったく……、ユーマもいい加減にしなさいよ。センリだっていつまでも、アンタの面倒なんて見ていられないんだから」 辺りを見れば美咲にペッタリとくっついたセンリがいる。 隙間なく寄る二人を目の前に、ユーマの苛立ちが再燃し始める。 「ムカつく」 独り言のように言い放った言葉が、微かに美咲の耳に届く。 美咲は居てもたってもいられず、センリの手を振りほどきユーマに駆け寄る。 「ユーマ……ごめんね。センリの事独り占めみたいにして。これからはユーマもセンリのフィールドに遊びに来て、今度一緒にお茶でも飲みましょ?もちろんマリカも……あとマスカーレイドも」 「忘れられたかと思ったよ、俺も招待してくれるの?美咲」 センリの後方から声が聞こえたと思えば、センリを通りこしてマスカーレイドが美咲にゆっくり歩み寄ってきた。 「覗きとは良い趣味ですね、マスカーレイド」 「人聞きの悪い言い方しないでよ、たまたま通りかかっただけだよ」 睨むセンリの視線を背中に感じつつも、知らぬ振りで明るい声で返事をする。 そんなセンリを他所に、マリカは「久しぶり」と、マスカーレイドに手を上げて挨拶をしている。 途中から見ていたと言うマスカーレイドはマリカに事の経緯を聞き、説明される話の一つ一つに笑い声を上げてその場の緊張感を解していった。 その傍らにいたユーマは力なく笑い、顔を緩ませる。 「美咲って馬鹿じゃねーの?それって俺に同情してんの?あー、もうやめるよ。こんな馬鹿に付き合ってても俺がアホみたいじゃねぇか……。マジ、アホみてぇ」 「同情なんかじゃ、ないわ…。だってセンリを好きな気持ちが一緒なんだもの」 「はぁ!?だ、誰がセンリを好きだって!?」 当たってるようで当たってない美咲の言葉に、ユーマは驚いてしまう。 「違うの?」 「……お前みたいな馬鹿は初めてだ、これから仲良くしてやるよ」 獲物を見るような視線を美咲に向け、笑うユーマに苦笑いを浮かべてしまう美咲。 「あは……、よろしくね」 こうして美咲に縁のある人がもう一人増え、美咲の道化の国での生活が賑やかになった。 |