道化の国
晴れる迷い
その頃、宿にいる白露とマリカはというと・・・。
「そもそも白露達はスキンシップが足りないのよ、もっとお互いの気持ちを伝え合って、寄り添って過ごしなさい。どうせいつもみたいに人が一人入るくらいの距離でいるんでしょ?」
「見てきたような事を言うな、・・と言うより、本当に見てたのか?」
「そんなわけないでしょ、相変わらず頭が固いのね・・、呆れてくるわ。それにね、男ならしっかりと女をリードしなさい!例えば・・そうね、普段は上手に女をリードして、ベッドの上では女を喜ばせつつ従順でいる。女王に傅く家来のように、爪先にキスを落とすのも焦がれて焦がれて漸く叶うご褒美なのよ!こんな男がいたら女なんてイチコロだわ!」
「それはマリカにだけしか当てはまらないと思うが。」
「失礼ね、そんな事無いわよ。花月なんて正真正銘の女王じゃない、プレイとしてじゃなくて実際にやれるんだもの・・・・。・・堪らないわ・・・、・・花月が羨ましいわね。」
何処か遠くに行ってしまったマリカを相手に、苦戦を強いられていた。
「・・・マリカはいつまで居るつもりだ。」
「あら、私が居たら嫌なのかしら?」
うっとりとしていた表情のマリカは、白露の声によって妄想を掻き消され不満そうに口を尖らせる。
「そんな事はないが・・、もう少しまともに相談に乗ってもらえるならな。」
「仕方ないわね、じゃあ基本的な事を教えてあげるわ。」
「じゃあ今までの講釈は・・・。」
「まず、白露と花月は正真正銘の両思い・・なわけよね?それを踏まえて・・、女は好きな相手になら多少強引にされても許せるものなのよ、そこに愛があると感じられるから。いくらウブな花月でも、白露の愛情を感じる事が出来るのなら喜ぶはずよ。」
言葉を遮られた白露は静かにマリカの言葉に耳を傾けた。
はたしてマリカの言う女に、花月は当てはまるのかどうか甚だ疑問に思えた。
「一線を越えないと、白露達は一生このままの関係でいくしかないわよ、そんなのは嫌よね?」
「・・・そうだな。」
自嘲めいた笑みを零し、白露はマリカの問い掛けに頷いた。
「でもねいくら強引にって言っても、本当に嫌がっているのに喜んでるなんて妙な勘違いはしちゃいけないわ。見極めは大切よ?」
「わかってる、いくらなんでもそれくらいはわかる。」
「あら、言ってくれるじゃない。結構難しいのよ、これが。」
目を見開いたマリカは驚いた表情で声を上げて笑う。
そんなマリカに対し、白露は無言で頷き大きく息を吐いた。
「俺が動かなければ・・・、何も始まらないからな・・。スキンシップ・・・、見極め・・・。」
迷いが吹っ切れたようになった白露は何処か清々しさを纏い、少しばかり晴れやかな表情で小さく笑った。
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