道化の国
軽くセクハラ
フィールドに戻った三人は、センリが入れた紅茶で喉を潤していた。
「そういえば・・・・。」
「どうしたのセンリ。」
「マスカーレイドをすっかり忘れていました。」
「あ・・。」
センリどころか、美咲にまで忘れられていたマスカーレイド。
「別に忘れてたとしても問題ないだろう、アレは。」
「そうですね。」
「そうだろう?」
淡々と話す花月に同意するセンリを、美咲は苦笑いで眺めているとため息をついた。
「花月にも早く誤解といてあげようよ。」
「それは後でします。もしかしたら・・、後々使えるかもしれませんし。」
「美咲、誤解とは何の事だ?」
「いえ、何でもありません。ところで、花月は白露と身体を重ねましたか?」
急に話題を変えられ、しかも不得手な部類の話だとすぐに悟った花月は紅茶を吹き出しそうになっていた。
「なっ!」
「大事な事です。どうなのですか?」
「それは・・・、まだ・・。」
「ではキスは?」
「それも・・・・、まだ・・・。」
今にも消え入りそうな声の花月は小さな身体を更に小さくし、紅くなる顔を隠すように俯いた。
美咲はと言うとカップを持ったまま顔を紅くさせ、落ち着かないのか瞳をあちらこちらに泳がせて話を聞いていた。
「花月は白露とするのは嫌ですか?」
「・・・この話は何か関係があるのか?」
紅い顔の花月は疑惑の眼差しをセンリに向け、口元を震わせていた。
「えぇ、大いに関係あります。」
「・・・。」
きっぱりと言い放つセンリに何も言えず、花月は一瞬顔を歪ませる。
「身体を交えて初めてわかる事も結構あるものです。貴女方はそれが無いから、こんなにも不安定な関係なのではないのでしょうか?」
「そう・・・なのか?」
急に花月に視線を向けられた美咲は狼狽してしまい、オロオロとするしか出来ないでいた。
「愛されている・・と言う実感は湧きます。美咲、貴女もそう思いますよね?」
「う・・・うん・・・。私も・・そう、思う・・。」
センリに促され美咲は恥ずかしさに耐えつつ、小さく頷くと誤魔化すように紅茶に口をつけた。
「わたくしも・・・悪かったのか・・。」
「花月が何か悪い事でもしたのですか?」
「わたくしは・・、怖いのだ。・・・その、・・そういった行為が・・。」
「そんなものは最初のうちだけです、すぐに良くなりますよ。きっと白露は上手にリードして・・。」
「センリ!!」
美咲はセンリの袖を引っ張り真っ赤な顔で、これ以上は言わないでくれと言わんばかりに首を大きく振った。
花月に目をやれば頬どころか、顔全体を赤く染め上げていて頭から湯気が出そうになっている。
「・・・・話をしているだけでこの様になるのでは、先が思いやられますね。」
センリは苦笑いで深いため息をついた。
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