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道化の国
剥がれないレッテル


「貴女は白露の元から逃げてきたのでしょう?」

「わたくしは白露から逃げてなど・・!話をはぐらかす・・。」

「逃げてないと言えますか?花月は言いたい事を言って、白露の元から逃げて来たのではないのですか?」


話を遮られた花月は何の反論も出来ず、強気だった視線を徐々に落とした。


「もう少しゆっくりと構えて、白露が何か話して来るまで待ってみてはいかがですか?」

「・・・。」

「白露は少しずつですが、変わろうとしています。悪い意味ではなく、花月にとって良い意味で変わろうともがいている最中なのです。」

「白露が・・・変わる?」


下がっていた視線を上げ、縋るような瞳の花月がセンリを捉える。
不安そうに事の成り行きを見守る美咲は固唾を呑み、釣られるようにセンリを見上げた。


「はい、ですから・・、花月はもう少し落ち着いてください。あまり問い詰めるような事をすると、白露はどうして良いのかわからなくなってしまします。」

「じゃあ・・・白露はわたくしに変な隠し事をしていないのか?」

「そうですね・・、ある意味隠し事に近いかもしれませんが・・・、時に男性の方が純情・・とでも言いましょうか。」

「益々意味がわからないではないか!」


センリは手を口元に添え考えるような仕草で呟くと、花月は声を荒げて立ち上がった。
そして大きく深呼吸をし、何処か諦めたように座り込んだ。


「でも、わかった・・少し待ってみよう。わたくしにとって悪い意味で無いのならば、少し・・・待ってみよう。」


少々ばかり納得した表情で話す花月に、美咲は嬉しそうにセンリに微笑みかけた。


「センリ。」

「では・・一旦フィールドに戻りましょうか。」


三人は立ち上がると最初とは違う空気を纏い、僅かに足取りを軽くしてその場を後にした。


残されたマスカーレイドは影を薄くして、自分のこれからの人生について悩んでいた。


「センリの逆鱗に触れたから、・・・俺、一生このまま男好きってレッテル貼られて過ごさなきゃならないのかな・・・。」


今にも風化してしまいそうなマスカーレイドは、何処か遠くを見ていた。


 

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