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道化の国
身を守る方法3


「美咲、戻りました。」

「おかえりセンリ。」


腕を広げるセンリに美咲は身体を預け、鼻腔を掠める甘い香を確かめる。
センリは美咲の柔らかな感触を楽しむと、ゆっくりとその身体を離した。


「美咲、自分で身を守れるようになりたいと言っていましたよね?これから私が教えてあげます。」

「本当!?センリ良いの?本当に教えてくれるの?」


散々渋っていたセンリが教えてくれる事に疑問を抱きつつも、教えてくれる人がセンリである事に喜びを隠し切れない美咲は何度も聞き返した。
嬉しそうにする美咲に、これから騙すような事をするセンリは心がチクチクと痛んだが、しかし美咲のためと迷いを拭い取る。


「はい、私が教えます。他の人に頼むより、私が教えていた方が安心できますしね。」

「嬉しい・・、あんなに反対していたのに、センリに教えてもらえるなんて思ってもみなかったから、本当に嬉しい!・・・お手柔らかにお願いします。」


ニコニコと笑みを保ったまま美咲は改まって深々とお辞儀をすると、センリの教えを待つべくその瞳をジッと見つめた。
ズキズキと痛む心が酷く疼くセンリは、美咲の真っ直ぐな瞳に耐えられず思わず視線を逸らした。


「・・では・・私の使用している鞭を持ってきます・・、少し待っていてください。」

「うん!」


居た堪れなくなるセンリは足早にリビングから去り、鞭を収めてある書斎に入った。


「・・・マスカーレイドの口車に乗らなければ良かったのでしょうか・・、既に美咲の視線に耐えられないのに・・・、事が終わるまで持つか心配です・・・。」


大きくため息を吐き、センリは美咲では扱いにくいであろう手持ちの中で一番重く長い鞭を取り出した。


「・・・・美咲、すみません。これも貴女のためです。」


センリは自分を奮い立たせ、その鞭を持って美咲の待つ部屋へと向かった。


「これを使ってみてください。」

「・・随分大きいね・・これ・・。」


センリに手渡された鞭は美咲の手にズッシリと圧し掛かり、口元を引きつらせた。


「これで大丈夫でしたら、次のステップに進めます。しかし、これを扱えないようでしたら美咲には不向き・・と言う事になります。ですから、これが無理なようでしたら諦めて私に守らせてくださいね?」

「・・・うん・・・。」


不安そうに目を泳がせる美咲に、センリは目を合わせることが出来ないでいた。




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あきゅろす。
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