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道化の国
すれ違い1


フィールドに戻る前に、センリはマスカーレイドにも白露達の悩み事を聞いてもらおうかと思い立ち、ほくそ笑んでマスカーレイドを呼び出した。

いつもであればすぐに来そうなマスカーレイドだが、なかなか姿を現す気配がなく、センリは通りに設置されているベンチに足を運んだ。


「遅いですね、暇なはずなのですが。」


センリが呟いていると、覚束ない足取りのマスカーレイドが姿を見せた。


「遅かったですね、暇なはずの貴方がどうしたのですか?」

「・・・誰のせいで暇になったと・・・・。」


マスカーレイドは恨みがましい瞳をセンリに向けるが、そんな事など一向に気にする様子がなく清々しい笑みで返した。


「何の事ですか?」

「“何の事ですか?”じゃないよ!俺が男色家って事が広まりすぎて、女の子とデートすら出来ないってのに・・・。」

「それだけ貴方は有名人だったという事です。貴方の知名度が再確認出来て良かったですね。」


わななくマスカーレイドを横目に目を細めるセンリは楽しそうに話をするが、当のマスカーレイドは心中穏やかでいられない。


「それだけじゃない・・・、そっち系の人に・・、誘われるようになったんですけど・・・。センリ、これはどうしてくれるんだよ!」

「それは良かったですね。想像以上の効果で、私としては満足です。」


満面の笑みを浮かべるセンリに何も言っても無駄だと悟り、マスカーレイドは落胆の色を見せる。


「・・・あの時はお楽しみの所邪魔して悪かったよ、だからこの噂どうにかしてよ。」

「噂なんて放っておくに限りますよ、下手に誤魔化したところで拗れるだけです。暫く大人しくしていることですね。」

「はいはい・・・、・・で、何、用事って。」

「あぁ・・、それがですね・・・。」


センリは白露達が倭の国を出てきた事を話し、そしてそれについての経緯を簡単に説明した。


「へー、すれ違ってるねぇ・・。・・・・ある意味、俺も女の子達とすれ違ってる・・。」

「いつまでもメソメソしていないで、気をしっかり持ってください。」

「誰のせいだと・・・。」

「今はマスカーレイドの話をしているのではなく、白露達の事を話しているのです。貴方の話は追々聞いて差し上げますから、今はこの問題をどうにかしましょう。」


いまいち信用性に欠けるセンリの言葉に疑いの眼差しを向けるマスカーレイドは、渋々白露達の事を考え始めた。


「とりあえず話しさせてみたら?二人が別々に悶々としてても仕方ないでしょ。アレじゃない?ハッキリと口に出してお互いの気持ちを言った事ないんじゃない?アレっきり、今までと変わりなく過ごしてたんじゃない?」

「・・・それは気付きませんでした。そうですね、もしかしたら互いの気持ちをハッキリさせていないのかもしれません。私のフィールドに花月がいますから、呼んで来ましょう。」


善は急げとばかりにセンリは立ち上がると、空間を切り裂きその漆黒の裂け目に入って行った。


「俺を置いてくのかよ・・。」


マスカーレイドは重い腰を上げ、センリの後を追う様に裂け目へと消えていった。





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