道化の国
悪魔=花月?
「美咲ー・・・。」
花月が目を覚ましリビングに向かうと誰も居らず、テーブルに一枚の紙が置かれていた。
眠い目を擦り、花月はその紙を手に持つと眉をしかめた後、瞳が大きく見開いた。
「センリめ・・・、わたくしを何だと思っているんだ!」
花月は踵を返し、すぐさま美咲を探し始めた。
各部屋を順番に開けて行くと、大きなベッドで眠る美咲を見つける。
「美咲!起きてくれ!」
「んんー・・、花月・・?どうしたの・・・?」
花月は無言で手にしていた紙を美咲の面前に差し出し、不貞腐れた顔を見せる。
「これ・・?・・・“出掛けてきます、花月の口車に乗ってフィールド外に出ないでください。花月は悪魔の化身です、十分気を付けてくださいね”・・・・悪魔の化身・・・。」
「わたくしの何処が悪魔に見えると言うんだ!センリの瞳はおかしいのではないか!?」
腕を振り上げ暴れる花月を宥め、美咲は苦笑する。
「センリは冗談を言ってるんだよ、ね、花月、そんなに怒らないで?」
「面白くない!こうなったらセンリの思う通りに動いてやろうではないか。」
花月は企むような笑みで眉を吊り上げ、口元を歪ませた。
「花月?」
「何処かに遊びに行こう!」
「え!?でもセンリはフィールド外に行っちゃ駄目って・・・。」
渋る美咲を尻目に、花月はクローゼットの前に押しやった。
「早く着替えるぞ!わたくしにも何か着る物を貸してくれ。着物は動きにくくて、かなわない。」
「か・・花月・・・。・・少しだけ遊んだら、帰るんだよ?良い?」
「わかったから、早く仕度しよう。」
美咲は花月にも着れそうな丈の短いワンピース渡すと、花月は早速袖を通し始めた。
着替え始めたのを見て、美咲は裾に水色の花が縁取ってあるシフォンの白いワンピースを取り出した。
「似合うか?」
半袖の袖口と裾にはフリルとレースがたっぷりとあしらわれた、黒の膝丈のワンピース。
サラサラとした質感の生地は着心地が良く、花月は裾を翻しその場でクルリと回った。
「似合うよ、可愛い。」
「よし、センリが帰ってくる前に出掛けるぞ!」
美咲からの賛辞もそこそこに、花月は美咲の手を取り出掛ける事を促した。
「あ、でもちょっと待って。」
美咲はセンリの置手紙に一筆書き加え、急かす花月の元へと向かった。
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