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道化の国
センリの独り言


スプリングを軋ませ、美咲の身体をそこに横たえらせる。
そしてセンリは小さく息を吐き、ベッドルームの扉を閉めた。

花月も眠りに付いたのか、いつもの二人きりのフィールドと変わりない静かな時間が流れる。

音を立てぬように眠る美咲に近寄り、センリはベッドに腰を下ろした。
美咲の髪を掬い取り、指から零れ落ちる絹糸の感触を楽しむ。

落ちる髪が頬にかかると、美咲はくすぐったかったのか顔を逸らしセンリに背を向けてしまった。
その美咲の行動に僅かに寂しさが残るセンリは、美咲の顔を覗き込むようにベッドに手をついた。


「・・・前回のように、お預けを食らわせるつもりは・・・・、ないですよね。」


苦笑いでいるセンリだが内心それは嫌だな・・・と思い、しかしそれは当たってしまう現実なのではないかと、肩を落とす。


「貴女は・・・どうして他人にそんなにも一生懸命なのでしょうか・・・。そんな献身的な一面は、私だけに・・・。」


向けられたら良いと言いたいが、センリは言葉を飲み込んだ。
それが美咲が周りから好まれる要因であると、知っているから。

独り占めしたくとも美咲のこの様な性格ではそれが中々難しい事を、センリは身をもって知っているから。


「苦労を厭わず健気に皆に気を配る貴女が好きですが・・・、美咲は・・、私の独占欲を何処まで理解しているのでしょうね。」


センリは自分を振り回す美咲に、ほんの少しの悔しさをぶつけるように深い口付けをする。
舌を割り入れ、熟れた果実のような赤い唇を啄ばみながら、美咲に鼻にかかった寝息を零させた。

美咲の意識が覚醒する寸前でセンリは唇を離し、濡れた唇に指を添えた。


「今は此処までにしておきます。この一件が片付いたら、覚悟してくださいね。」


センリは誰にも聞こえる事のない呟きを漏らし、静かにベッドルームを後にした。
掌に僅かに残る美咲の温もりを連れ、センリはリビングに向かった。




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