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道化の国
眠り


美咲はゲストルームを手早く用意し、疲れた様子の花月に簡単にフィールドの説明をしながら部屋を案内をした。


「何か必要な物があったら言ってね。」

「・・・すまない。」

「良いの、前に花月達にはお世話になったもの。お返しが出来て私嬉しいの、だから気兼ねしないでゆっくりしていってね。」

「・・・もう疲れたから湯を浴びて床に着く。・・・美咲、本当にありがとう。」

「わかった、じゃあゆっくり寝てね。おやすみ。」


花月は無言で頷き、美咲の用意した部屋着を持ってバスルームへと向かった。


一人ゲストルームに残った美咲は、元気のない花月に困ったようにため息をついた。

すぐに眠れるようにベッドメイクをし、花月が少しでも快適に過ごせるよう美咲はあちこちを見回し確認をする。
白露の事で頭が一杯であろう花月のために、自分が出来る事はなんでもしてあげたく、此処にいる間は穏やかでいられるようにと、そんな思いを込めて。

そしてセンリの待つリビングへと少し足取りを重くして、これからどうしたら良いのか考えながら歩いていった。


「花月はどうしました?」

「疲れたからお風呂に入って寝るって・・。」


美咲は扉を静かに閉め小さく微笑むと、センリに身体を預けるようにソファに腰を下ろした。


「ねぇ、センリ。どうしたら良いのかな?白露から何か言ってもらった方が良いとは思うんだけど・・。」

「そうですね・・、白露は花月を大事に思うあまり、自分を貶めているのをわかってはいるのですが。・・・どうも上手く行きませんね。」

「うん・・、折角上手くいったと思ったんだけど、難しい・・・ね・・。」


美咲はセンリの肩に手を回し、胸に顔を埋め瞳を閉じる。

伸ばせばすぐに届く所に、愛しい人がいる。
その愛しい人の体温や鼓動を花月にも味わってもらいたく、どう説明して良いのかわからない言葉では言い表せないもどかしさを抱え、美咲はセンリの腕の中でまどろみ始めていた。


「・・・美咲?眠ってしましましたか・・。」


滑り落ちそうになる美咲の身体を抱き直し、センリは小さく寝息を立てる美咲の額に唇を落とした。


「今回で、この様な事はさっさと片付けましょう。ですから・・・、少しだけがんばりましょうね、美咲。」


センリは美咲を抱え上げ席を立つと、美咲を起こさぬようソッとベッドルームへと向かった。



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あきゅろす。
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