道化の国
協力2
「これからどうするのですか?もう倭の国に戻りますか?」
「いや、暫く気持ちが落ち着くまで道化の国に滞在しようと思っていたのだが・・。何処か適当に宿を取るつもりだ、後でまた連絡する。」
「わかりました。」
白露は背を向けて軽く手を上げて僅かに憂いを見せる背中を晒し、その場を静かに立ち去った。
「さて、白露がこうもまいっているとは・・・、中々見る事のない姿ですね。」
センリが踵を返し美咲の待つフィールドに帰ろうとすると、聞き覚えのあるけたたましい足音が近付いてきた。
「センリー!」
胸騒ぎを感じ、疲れたように瞳を閉じたまま振り返ると身体に重い衝撃を感じた。
「今すぐ美咲に会わせてくれ!」
「花月・・・、もう少し大人しく登場出来ないものですか?白露にだって常々言われている事でしょう?こちらに来る事は誰かに言ってきたのですか?」
「御託は良いから、早く美咲の所まで連れて行ってくれ!」
鬼気迫る迫力で花月はセンリの腕を強く握った。
センリは仕方ないとばかりにため息を漏らし、花月の手をソッと剥がした。
「わかりましたから、ですから少し落ち着いてください。」
「落ち着けないからこうやって急いで来たんだ!早く・・、頼むセンリ・・。」
「美咲は私のフィールドにいます。連れて行ってあげますから、・・泣かないでください。」
「わたくしは泣いてなど・・・!」
瞳を潤ませる花月はセンリに見据えられ、不意に視線を逸らした。
剥がされた手は行き場を失い、落ち着きをなくして手を組み硬く握った。
「・・じゃあ、行きますよ。ついて来てください。」
「・・・・。」
最初の言動とは打って変わって勢いをなくした花月は、静かにセンリの言う事に頷いた。
それから花月はフィールドに着くまで自分からは一言も喋らず、センリの問いに小さい声で答えるしかしなかった。
白露といい、花月といい、どうしてこうも見計らったようにタイミング良く行動を起こすのだろうと、センリはおかしくて堪らなかった。
似たもの同士で幼い頃から共に生活をしていればこそ、分かり合えても良さそうなものなのに・・と、心から不思議に思えて口元が緩んでしまう。
センリはこの問題をどう解決出来るのか、絡まっている糸をどうやって解いてやろうかと知恵を絞る。
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