机に置かれた手紙を手に取ると、センリの顔色が変わった。
手には二通の手紙があり、それを眺めている。
固まるセンリを不思議に思った美咲は、机に近寄った。
「何、どうしたの?」
「……これを見てください。一通は私宛に、もう一通は美咲宛です」
見ればどちらも桔梗の花が描かれた封筒。
花月が次期当主を担う、倭の国を象徴する花。
センリは美咲宛の手紙を渡し、自分宛に来た手紙を開けた。
手紙を受け取った美咲は、どうしたんだろうと思いながら封を切った。
「……これ、花月からだ」
「私は、……白露からです」
センリの言葉に驚いた美咲は、隣に立つセンリに顔を向けた。
「白露?……ね、センリ。そっち、なんて書いてある?」
「……“限界”……と、ただ一言書いてありますね」
何が限界なのか、何となしに理解できたセンリは大きくため息をついた。
「ふうん……、花月はね……“わからない”って一言書いてある。何なんだろうね」
意味のわからない美咲は頭を捻り、手紙をジッと眺める。
その時、センリの背中に戦慄が走った。
これから何かが起こる。
センリの直感が、悪い考えを横切らせた。
「悪い予感がします……」
「どうして?」
「……あまり口に出したくありませんが、きっと白露達はこちらに来るつもりなのではないでしょうか」
重い口調のセンリは台詞を言い終えると、僅かに困ったような笑顔を美咲に向けた。
「また一騒動起こるのでしょうか?」
「あはは、……そうなのかな」
力なく笑う美咲は肩を竦めるセンリを見上げ、二人で大きなため息をついた。