道化の国
噂2
マスカーレイドが事の顛末を言う前に、センリがかいつまんだ話を美咲に説明した。
それを聞いた美咲はマスカーレイドになんて声をかければ良いか、頭を捻っていた。
「ね、美咲。聞かない方が良かったでしょう?つまらない事で、貴女の頭を煩わせたくなかったのですね。」
「センリ達と違って、真剣に考えてくれる美咲は大好き・・・・。」
今にも飛びつかんばかりに美咲に抱きつこうとするマスカーレイドに、センリは無言の圧力をかけた。
鋭い眼差しをもって。
「・・・嗚呼!もう、何もかも嫌だー!」
美咲に触れそうになる一歩手前で手を引っ込めたマスカーレイドは、その手で頭を抱え発狂寸前になった。
「マスカーレイド・・・、その女の子達に何か悪い事でもしたの?」
「まさか!女の子は俺の癒しだよ!?そんな事・・。」
「面倒になると、女性を簡単に捨てるのは誰でしょうかね?」
「センリは黙ってて!良いかい美咲、センリの言う事は信用しちゃ駄目だよ?俺の言ってる事が正しいんだからね?」
困ったように笑う美咲はマスカーレイドから視線を外し、センリを見つめた。
「美咲は私を信じていますよね?」
「・・うん・・・。」
「美咲〜!」
そりゃないよと嘆くマスカーレイドにセンリは大きく息を吐き、仕方ないとばかりに自分が考えたシナリオを話し始めた。
「きっと噂が立ったのですよ。」
「噂?」
「噂ってなんの!?」
「マスカーレイドが男色の気があると言う噂です。」
センリの微笑みとは真逆に、マスカーレイドは口を大きく開け言葉をなくしていた。
「ちょ・・・、一体誰がそんな噂を・・・もしかしてアルマ!?」
「いえ、アルマは自分のプライドを守るためにその様な事はしないでしょう。」
「じゃあ誰が!?」
「アルマがルイに愚痴を零したのでは・・?彼は面白そうであれば何でもしそうなタイプでしたし、きっとそこから漏れたのですね。」
マスカーレイドは眉を吊り上げ、センリの言葉に耳を傾けた。
ブツブツと呪いの言葉染みた独り言を漏らし、肩を落としている。
「それに・・・アルマの他にもマスカーレイドが男色家と言う話に、笑っていた方がいましたよね?」
マスカーレイドは俯いていた顔を挙げ、マリカを見据えた。
「・・・・・マリカ・・?ねぇマリカ、この話誰かにした?」
「え、私?・・・・まぁ・・ちょっとね。でも、すぐにそんなわけないって笑い飛ばしたわよ?」
「それを誰かが話半分で聞いて、そこから広まったんでしょうね。此処まで上手い具合に広まると、私としても満足です。」
涼しげな表情で話すセンリは目を細め、美咲の頭を自分の胸に預けさせた。
しかし抱き寄せられた美咲は苦笑いで、この場をどう収集してよいか考えあぐねいていた。
愕然とするマスカーレイドはソファにもたれ、魂が抜けたように力をなくしていた。
「人の噂とは・・怖いものですね・・。私の心地良い一時を邪魔したのですから、それなりに罰を受けていただかないと。」
ほくそ笑むセンリの言葉は、マスカーレイドには届いていない。
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