道化の国
静穏
すっきりとした目覚めを迎えたセンリは、自分の傍らで眠る美咲に視線を落とした。
「随分無防備に眠りますよね・・、美咲は。・・・だから・・つい、悪戯してしまいたくなります。」
センリは美咲の唇に指を這わせ微笑むと、ゆっくりと顔を近づけ触れるだけのキスをした。
しかし美咲は気付く事はなく、いまだ深い眠りに漂っていた。
寝起きの心地良さを抱いたまま、センリは静穏な気持ちで静かに眠る美咲を眺めていた。
「・・・ん・・・。」
美咲が寝返りをうつと、自分の頭を撫でる大きな掌を感じ取った。
ぼやけた視界にはセンリが微笑みを湛えている。
「おはよう美咲、よく眠っていましたね。」
「おは・・よ・・、センリ・・、寝てないの?」
「いいえ、美咲の身体が温かくて・・、とても深い眠りに落ちていたようです。最高の目覚めでしたよ。」
その台詞に美咲は小さく笑うと、センリの側に少しずつ近寄り顔を胸に押し付けた。
「私も・・、すごく気持ち良い・・。起きたら目の前にセンリがいるんだもの・・、これ以上の幸せなんてないくらい。」
センリは摺り寄せられる頬に胸が熱くなり、美咲から言われた言葉に心が温かく感じられた。
「・・・美咲は・・、私が欲しい言葉を言ってくれます。私の心が貴女で溢れんばかりです。」
互いに微笑みあい交じあう視線にどちらともなく瞳が閉じられ、そして唇が重ねられた。
しかしすぐにそれは離され、眉をしかめるセンリが扉に目を向けた。
「・・・何度言ったらわかるのでしょうか・・・。」
怒りのこもった声色でセンリはベッドから降り、身だしなみを整えた。
「美咲は後からゆっくり来てくださいね。」
「誰か来たの?」
「・・マリカ達が来たようです。」
センリは柔らかな笑みで美咲にそう言うと、扉を開けリビングへと向かった。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
無料HPエムペ!