道化の国
来訪者4
「送ってきたわよ。」
「ご苦労様でしたマリカ。」
アルマを送ってきたマリカに労いの言葉をかけ、センリはマリカのニヤニヤする顔を見て思わず笑みを零した。
「あー、おかしいったらないわ!マスカーレイドの慌てぶりもそうだけど、アルマの動揺っぷりは凄まじかったわ。」
「そうですか。」
嬉しそうに微笑むセンリは緩む口元を押さえ、マリカの興奮ぶりを眺める。
「アルマは自分の目がおかしくなったと言っていたわ、よほど男を見る目に自信があったみたいよ。そんなアルマが男好きの男を気に入ったとあっては・・・、もう呆然としてたわ。あれじゃあ暫く大人しくしてるわね。・・あら、美咲どうしたの?」
嬉々として話しを進めるマリカは、上の空になっている美咲の肩を叩き声をかけた。
「マリカは・・知ってたの?マスカーレイドが・・男の人を・・・、センリを・・。」
「馬鹿ねー、そんな事あるわけないじゃない。根っからの女好きが、男となんてないわよ。道化の国に雪が降るくらい、ありえない話だわ。」
「え、じゃあ・・、さっきのセンリの話は・・・嘘・・?」
「だからさっきからそう言ってるじゃん、いい加減目を覚ましてよー!」
テーブルに手をつき、マスカーレイドは美咲の前に顔を突き出してここぞとばかりに否定をした。
美咲が隣に目線を向ければ、悪戯っぽく微笑むセンリがいて。
「すみません美咲、アルマを懲らしめるために嘘をつきました。」
「じゃあ、本当に全部・・嘘・・?」
「はい。」
悪びれなく話すセンリに美咲はどこかホッとしたような、それでいて少しばかり呆れたようなため息をついた。
「どうして俺の言う事を信じないで、センリの言葉を信じるんだよ。」
「それは信頼度の差でしょうね。」
「なんだよそれ。」
開いた口が塞がらないマスカーレイドはそのまま肩を落とし、大きく息を吐いた。
「まぁ良いじゃない。美咲の誤解は解けたことだし、マスカーレイド帰るわよ。」
いまだ治まらぬ笑いは、マリカの肩をいつまでも揺らしていた。
そんなマリカの後姿を、どんよりとした影を背負ったマスカーレイドがため息を零しながらついて行った。
「じゃあ・・・また来るね。」
「う・・うん。」
重い口調で話すマスカーレイドに、美咲はマスカーレイドの言葉を信じてあげなかった事を少し後悔していた。
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