「ユーマ、もう少し大人になったらどうです?私に執着するのは、そろそろ止めていただきたいですね」 「センリの怒る顔が見れたら用無しだ!今すぐ俺に殺られろよ。本当はあの女をどうにかした方が面白そうなんだけどよ……」 「美咲を狙うのは貴方にとって、得策ではありません。二度と近づかない方が身のためです」 会話が止み暫しの静寂の後ユーマはすかさずナイフを投げつけるが、センリは放たれたナイフを鞭で払いのける。 その一瞬にセンリの懐に飛び込んだユーマは、ナイフの切っ先を首元目掛けて突く。 しかしその手はセンリによって軽く制され、ユーマは逃れるべく腕を強く引き弾かれたように後方へ飛び上がった。体制が崩れた隙を突き、センリはしなやかな鞭をユーマの腕に巻きつけた。 「クッ……」 「貴方が私に敵う思いますか?」 ユーマから視線を逸らさず、センリはタキシードのポケットから小さな硝子の玉を取り出し、親指で弾いて地面に落とすと硝子は粉々に砕け散った。 「マリカ、急用です。来てください」 「へっ、随分余裕だな!こんなんで俺に勝てると思うな!」 「余裕なんて思ってはいませんよ。私の弱点を貴方が知っているのですから」 ユーマは腕に巻きついた鞭を振りほどくと戦闘態勢になり、すぐさまセンリに飛びかった。 「だったらもっと焦った顔でも見せろよ!」 「弱点を持ってるからこそ、たとえ小さな敵でも全力で戦うからユーマでは私には勝てない。貴方には驕りがあります、だから私には勝てないのです」 センリはナイフをかわして鞭を持った手を振り上げ、力のままにユーマの背中に鞭を走らせた。 切り裂かれるような痛みが背中を這い、ユーマは思わず膝を落としてしまう。 「今のは美咲の肌に悪戯をした罰です」 「ああぁ!クッ……クソ……」 「貴方はまだ子供です。ですからあまり痛めつけたくはないのですが、お仕置は必要ですから」 「ふざけんなっ!まだだ……まだっ!」 ユーマは狂気を纏い、取り付かれたように何度もセンリに立ち向かっていった。しかし力の差は歴然としていて、ユーマは尽く返り討ちにあっていた。 そんな時、空間が切り裂かれ、それまで動いていた二人は一瞬にして止まった。 |