道化の国
言葉に出来ない愛5
情事後、美咲は心地良い気だるさの中センリの腕の中でまどろんでいた。
「センリは・・ヤキモチ妬くんだね。」
「美咲に関しては、とても我慢が出来ませんね・・。・・・嫌ですか?」
「ううん、嬉しい・・。それだけ私を愛してくれているのかなって思って・・。」
センリは胸に寄り添う美咲に視線を向け、クスリと笑みを見せた。
「良かった・・、でも私の嫉妬深い所は、あまり見せたくありませんね。」
「どうして?」
「・・・これでもかなり抑えています、私が包み隠さず嫉妬心を剥き出しにしたら、きっと美咲は私を怖がってしまうのではないかと・・・、そう思ってしまいます。」
「私が怖がるほどなの?」
苦笑いの美咲はセンリと視線を絡ませ、腕を肩口に回した。
美咲の体温を確かめるように、センリは手を重ねた。
「私でもこれほどまで嫉妬深いとは思わないほどに、・・自分でも狼狽するほどなのに美咲がそれを知ったらと思うと・・・、ですから出来るだけ隠しておきたいです。」
「今まではヤキモチ妬いた事ないの?」
「はい、美咲が初めてです。美咲と出逢ってから初めて味わう感情が多すぎて、私も戸惑ってばかりですよ。」
センリは天井を見上げ小さく息を吐くと、美咲の手を優しく握り締めた。
「こんなにも一人の人間を独占したいと思った事は、一度としてありません。美咲が、初めてです。美咲が思っている以上に、私は美咲の事しか考えられないようです。」
「センリ・・。」
「心が苦しいほどに・・しかしそれがとても心地良くもあり、貴女の何もかもが私の中に溶け込んでいって、愛しさが込み上げて来る・・、なんとも言葉で表すのは難しいですね。」
身体ごと美咲の方に向け慈しむような瞳で見つめ、センリは美咲の髪を壊れ物を扱うように優しく撫でる。
「本当に・・・、不思議です・・。私にも命を懸けてまで愛したいと思える人が現れるなんて、思ってもみなかった事ですから・・。」
呟くように囁かれた言葉は美咲の心に染み渡り、自分がどれだけ愛されているのかを思い知らされた。
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