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道化の国
ルイ2


「センリ・・・センリ・・助けて・・・。」


嗚咽混じりに泣き出すと、ルイは美咲から身体を離し辺りを見回した。


「どうして俺のフィールドに来れるんだ・・?」


呟くルイは眉をひそめ怪訝そうな顔をした。
ただならぬ様子のルイに涙で滲む視界の中、美咲も周りを見始めた。

するとベッドルーム全体が歪んだかと思うと、切り裂かれた空間から息を荒げたセンリとマスカーレイドが現れた。


「ルイ・・・貴方ですか・・・、美咲を返しなさい!」


センリの目の前には、美咲を組み敷くルイが驚いた表情でセンリを見つめている。
ルイの下には美咲が力なく涙を流していた。


「どうして俺のフィールドに来れたんだ?マスターキーリングもないのにどうして・・。」

「私と美咲は契約を結んでいますからね、美咲のリングと私はいつでも繋がっています。美咲が居る所には、私は難なく入って行けます。・・・それよりも早くそこを退いてください・・・。」

「・・ふーん、それは俺の見落としだな〜、失敗かよ・・。」


センリの言葉に悔しそうに目を細め、ルイは美咲から身体をどかした。
ルイの重さを感じなくなった美咲は転がるようにベッドから降り、センリのもとへと足が絡まりそうになりながらも縋りついた。


「センリ・・!」

「美咲大丈夫ですか?」


顔を会わせ辛いなんて考えていた事など美咲の頭からとうに消え去り、センリが来てくれた事で安堵から涙が溢れて止まらない。

センリの問い掛けに、美咲はただ頷いていた。
そんな美咲を腕の中に優しく包み込むと、ゆっくりと身体を離した。

センリはつまらなさそうにするルイのもとへ行き、静かな怒りを湛え水色の瞳を射るように見据えた。

悪びれた様子を見せないルイにセンリは手を振り上げ、頬に平手を打ち付けた。


「――ッ・・。」

「今のは美咲の分です・・・、貴方は何のためにこんな事をしたのですか?」


突然の行動に美咲は息を呑み、身体が硬直してしまう。
そんなセンリを止める事も言葉を掛けることも出来ず、成り行きを見守るしか出来なかった。

赤くなる頬を触りもせずルイは自嘲したように笑い、センリを斜めに見上げた。


「そんなの決まってる、俺も希望の光が欲しかっただけ。アルマの奴、失敗しやがって・・・、役立たずだな。」

「アルマ?貴方はアルマと・・・。」

「センリに近付いて、美咲との仲を裂くようにアルマに言ったんだ。」


玩具を取り上げられたような子供染みた態度でいるルイに、センリは怒りで我を忘れてしまった。

センリはルイに掴みかかり、襟を締め上げた。


「貴方って人は・・ッ!そんな事のために美咲を・・。」

「センリ!もう止めて、もう良いよ・・。」

「ほら・・・美咲が・・もう良いって言ってる、手・・・、離してよ・・。」


苦しそうに顔を歪ませながら尚も憎まれ口を叩く言い方をするルイに、センリは力を緩める事無く再度強く締め上げる。


「――ぐ・・ッ。」

「センリ、もう止めて、お願いだからもう・・・。」


美咲はセンリの背中にしがみ付き、センリを強く抱き締めた。
鼻にかかる上ずった声でいる美咲が泣いていると知り、センリはルイから手を離した。

センリの腰に回された美咲の手に触れ、センリは大きく息を吸い込んだ。


「・・・わかりました、美咲・・、泣かないでください・・。もう止めますから、泣かないでください。」






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あきゅろす。
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