道化の国
捉えた思念
マスカーレイドは店の扉に手をかけ、小さく息を吐いた。
美咲に対して偉そうな事を言っしまったことを、少し後悔していた。
ある意味自分の経験上の話しなのだから・・。
恋愛をそつなくこなしているマスカーレイドは、恋愛を心から楽しめた事がなかったから。
不器用ながらも一生懸命な美咲の姿を見ていて、思わず口に出してしまった。
「・・らしくない事言っちゃったな・・・・。それに美咲を抱き締めたなんてセンリにバレたら、何をされるか・・・。」
センリにバレた時の事を考え身震いをするマスカーレイドは、静かに扉を押した。
すると目の前にはセンリが扉に手をかけようと伸ばしていた所で、驚いた表情で立っていた。
「マスカーレイド、美咲と一緒に居るはずなのでは・・。」
「美咲ならそこに居るよ、早く行ってきな。・・・あんまり泣かせるような事するなよ?」
その言葉に美咲のもとに行こうとしていた足がピタリと止まり、センリはマスカーレイドに目を見開いた。
「泣いて・・いたのですか・・・?」
「まぁね、ほら、良いから早く行ってこいって!」
マスカーレイドは焦りの色を見せるセンリの背中を押してやると、一緒に美咲の居た場所に向かった。
「・・・美咲は何処ですか・・?」
「あれ?おっかしいな〜、確かにさっきまで此処にいたんだけど・・。」
センリは辺りを見回し、焦る気持ちを持て余し始めた。
「美咲!美咲何処ですか!?マスカーレイド、美咲は確かに此処にいたのですか?」
「此処に座っていたんだ、それは間違いないよ。何処にも行かないと思うんだけど・・・。もしかしたら誰かに連れて行かれたとか・・・、まさかね。」
「美咲・・・。」
センリは拳を硬く握り締め、行方知れずになった美咲の心の声を探した。
「お願いです美咲・・・、どうか私を呼んでください・・、美咲・・。」
センリは瞳を閉じ、美咲の思念を必死に手繰り寄せる。
沈黙していたセンリが瞳を開けると、その瞳は徐々に強い光を放ち始める。
「・・・見つけました・・、美咲の声が少し遠いですね・・・、急がなくては・・っ!」
センリは手を伸ばし空間を大きく切り裂くと、闇の中に駆け込んでいった。
「ちょっと待って、俺も行く!」
閉じられるギリギリにマスカーレイドは空間に飛び込むと、その切り裂いた跡は変わらぬ風景にゆっくりと姿を戻した。
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