道化の国
茶色い巻き髪2
センリ達の会話を途中まで聞いていた美咲は、アルマが一緒に行く事に関し断っていたはずが、急に連れて行くことになったのが不思議だった。
全ての会話を聞いたわけではないが、センリの態度から見て、手のひらを返したように簡単に連れて行くとは思えなかったから。
皆の集まるダイニングバーに着くまで、アルマはベッタリとセンリに張り付いて離れない。
嫌そうにするセンリはアルマに何か囁かれると、苦虫を噛み潰したように眉をひそめアルマにされるがままになっていた。
美咲は自然とセンリ達から距離をとり、二人の後ろから一人トボトボとついて行った。
センリに側にいるように言われたが、隣にはアルマがいるため、そんな二人を見ていたくない美咲はセンリの申し出をやんわりと断った。
センリはそんな美咲を気にしつつも、アルマをどうにか出来ないものかと考えを巡らせていた。
店の中に入ればいつものメンバーに、マリカの騎士達が数人。
美咲の見知った人ばかりがいて、少し心を落ち着かせることが出来た。
「美咲、遅かったわね。早く来ないと、ユーマにご飯全部食べられちゃう・・・。・・美咲、センリの隣にいる女は誰かしら?」
「そうそう、あれ誰?センリに随分ベッタリなんだけど。」
いつも美咲の側にいるセンリが見知らぬ女の子といる所を見たマリカとマスカーレイドは、美咲に不思議そうに聞いた。
「・・・ア・・うん・・・。」
マリカに声をかけられ一瞬華やぐ美咲の表情が、瞬く間に陰を落としていった。
マスカーレイドの言葉で、美咲はセンリを見てしまったから。
出来るだけ見ないようにしていた美咲は眉を寄せ俯き加減で、ここに来るまでの道中であった出来事をマリカ達に話すと、美咲は大きくため息をついた。
「・・それで、美咲はヤキモチを妬いているのね。」
「・・・うん・・、他の女の子と歩いているセンリを見ているのは・・、すごく辛い・・。マリカは平気なんだけど、やっぱり知らない女の子だと、・・こう、心がモヤモヤして、苦しくて・・。」
「そう・・、でもね美咲。センリの心は間違いなく美咲にあるわ、それだけはどんな事があっても忘れちゃ駄目よ。センリを信用しなさい、ね?」
「うん・・・わかった・・。」
少しぼんやりとする美咲を宥め、マリカはグラスを傾けながらセンリにベッタリとくっつくアルマを眺めていた。
「アルマねぇ・・・、一体どう言うつもりなのかしら・・。マスカーレイド、どう思う?」
「さぁねぁ〜・・、しかしあのセンリが手こずってる所を見ると、只者じゃないんだろうね。」
「でも、あの娘・・、美咲に見せつけるようにしているわね・・・。ほら見て、ちらちらと美咲の様子を窺っているわ。」
マリカはマスカーレイドに目配せをし、視線をアルマに向けた。
アルマは美咲の落ち込んでいる様子を見てほくそ笑み、美咲がセンリに視線を向けると異様なまでににこやかな笑みをセンリに投げかけていた。
「・・本当だ・・、何か目的でもあるのかな。」
「少し様子を見てみましょうかしらね・・・。」
押し黙る二人は、薄笑いを浮かべるアルマをじっと見ていた。
マリカがグラスを回しアルマを見ていると、暗い表情の美咲がふらりと店の外に出ようとしている。
「マスカーレイド、美咲が外に出て行ったわ。一人でいると危ないから、一緒に行ってくれる?私はアルマを見ているから。」
「はいはい、全く・・、どうしたんだろうね、センリの奴・・・。」
マスカーレイドはグラスを置き、美咲の後を追いかけた。
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