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道化の国
茶色い巻き髪1

それから暫くは何事もなく、平穏な時を過ごしていた二人。

久しぶりに皆で食事をする事となり、以前マリカがパーティーを開いてくれたダイニングバーに集まる事となった。

大勢での食事は美咲がいたくお気に入りで、とても嬉しいイベントの一つ。
仕度を済ませた美咲がセンリを急かし、早く行こうと引張り気味に歩みを進め、フィールドを後にした。


センリと美咲がフィールド外を歩いていると、茶色い巻き毛が可愛らしい女の子が二人の前で微笑んで立つ。


「初めまして、センリ。」


女の子はニコリと眩いばかりの笑顔を見せ、近付いてきた。
そしてセンリの前に立つと、センリの腕に絡み付いてきた。

見覚えのある水色の瞳はルイを思い出させ、更には見ず知らずの女の子に名前を呼ばれ、多少の不快感を感じ得ないセンリは眉をしかめた。


「これからどちらへ行かれるのですか?私もご一緒しても良いかしら?」

「断ります。」


美咲など初めから居なかったかのように振舞う女の子は、センリばかり見ていて尚も執拗に食い下がる。
突然の事に困惑の色を隠せない美咲は、センリから離れ少し距離をとる。


「どうして?少しくらい良いでしょう?私アルマって言いますの、これから仲良くしてくださいね。」

「断ります。」


アルマの方を全く見ようともせず、センリは苛立つ気持ちを露にしないように自分を抑えた。
しかしセンリが同じ言葉で断りをいれても、全く離れる素振りを見せない。

少しあどけなさの残るアルマは、美咲よりも更に幼く感じられる。


「早く離れてください、私は女性や子供に手を上げたくはありませんが・・、あまりしつこいようだと・・・。」


センリは美咲に聞こえないように小声で話すが、アルマは微笑を湛えたままセンリを見据えている。
センリから見れば子供のようにも見えるが、しかし肝が据わっているのか脅した所でアルマの表情は全く変わらない。


「そんな事言ってはいけませんわ、・・・それにそんな乱暴な事をするようでしたら、私、貴方に手を上げられたと貴方の大事な希望の光にばらしますわ。」


子供の様に無邪気だった笑顔が、妖しく口元を歪ませた。
センリはアルマをきつく睨むと、アルマは微笑む表情を崩さない。


「貴方は随分御執心な様子ですわね、・・あの希望の光に・・・。貴方はあの娘の前で、怒りを見せたくはないのですわよね?でしたら、黙って私を連れて行った方が得策だと思いませんか?」


勝ち誇ったように笑うアルマは、考え込むセンリに目を細める。


「・・・・わかりました。しかし私に触れないでください、私に触れていいのは美咲だけです。それを約束していただけるなら・・・。」

「ええ、わかりましたわ。」


眉を寄せて諦め口調のセンリは喜ぶアルマにため息を零し、美咲がいる所に近付いていった。


「美咲、・・・その・・、成り行きでアルマを・・、あちらにいる方なんですが・・、アルマも一緒に行く事になりました。しかし美咲は相手にしないで良いですからね、得体の知れない人間です。不用意に近付いてはいけませんよ?」

「うん・・わかった・・・。」


さっきまで浮き足立っていた美咲の足取りは重くなり、どこか心も重くなっていた。






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あきゅろす。
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