「やぁ美咲、久しぶりだね」
ヒラヒラと手を振るマスカーレイドが店の外にいた。
「此処で何をしてるのですか?」
センリは冷たい視線で睨む。
それはマスカーレイドが現われた事に関し、さも迷惑だと言わんばかりに。
「やだなー、折角忠告してあげようと思って来たのに、いきなり睨まないでくれるかな」
両手を肩まで上げて、呆れた面持ちのマスカーレイドは首を横に振る。
「……で、忠告とは何の事ですか?」
美咲をマスカーレイドの瞳に触れぬよう、センリの陰に隠すと用件を急かした。
「ユーマの事だよ」
瞳を伏せて深い溜め息をつくセンリに、マスカーレイドは怪訝そうに首を捻る。
「ユーマが美咲を狙っている事ですか?」
「知ってたんだ」
「知ってるも何も、美咲は一度接触しましたから」
「えっ!?」
心配そうな顔で美咲を見るが、センリの陰にいるのでマスカーレイドからは表情が見て取れないでいる。
「美咲無事だったの?」
「一応、……無事だったとは言い難いですが」
怒りが再燃したのか、センリの言葉に力がこもる
「わ、私は無事だよ!ほらっ」
元気だと言う事を見せつけるように陰から姿を現し、センリの顔を伺う。
半分苦笑いではあるが、少しだけ和らいだ表情のセンリが美咲の頬に手を添えた。
「美咲の大事な肌に悪さをしたのです。許し難い事ですよ」
和らいだ表情に、刺々しい口調のセンリ。
美咲はすぐさまセンリの心情を感じ取り、おどけた様子を縮小させた。
「一体何されたんだ?」
「キスマークを残したのです」
センリが憤慨していると、マスカーレイドは唖然として息を呑む。
「それくらいなら良いじゃーん、ねぇ美咲。どんな事をされたと思えば」
「それくらいとは言えないけど……。で、でも無事は無事」
「とんでもありません」
美咲が喋っていると、センリによって会話が遮断された。
「そのような事言わないで下さい。私は美咲が心配なのです。どんな事をされても、私に心配をかけまいと平気だと言いそうな貴女が……心配なのです」
真剣な顔のセンリが美咲に身体を向け、そのまま抱き締めた。
「……センリ」
美咲は戸惑いながらもセンリにこれ程愛されているのかと、強く実感していた。
「マスカーレイド、忠告ありがとうございました。貴方もユーマを見つけたら、掴まえておいて下さい。早めに手を打ちます」
瞳を細め冷めた言い方をするセンリの顔は、先程美咲に見せた顔とは違う真剣な顔をしていた。
静な怒りを秘めた真剣な顔を。