道化の国
交戦1
外の騒がしさに、センリを横目にユリエルは表に飛び出た。
「何の騒ぎだ!」
「レフトナント・ジェネラル!こいつ等が我等を愚弄したので制裁を……、しかし……」
ガーディアンがユリエルの事の有様を報告すると、倒れる仲間に視線を移した。
「無様な姿を晒すんじゃない!貴様等それでもガーディアンか!」
ユリエルは怒れる思いを拳に込め、壁を強く叩き付けた。
ビリビリとした空気に混じり、怒りの波動を感じたガーディアンは身を竦めながら頭を下げた。
「申し訳ありません!」
「敗北の二文字は聞きたくない、わかったな」
「はっ!」
奥歯を噛み締めるユリエルは、ニヤつくユーマをきつく睨んだ。
ユーマの持つナイフの輝きは失せ、血糊がベッタリとついていた。
更に無様にも部下の膝に土をつけられていて、酷く憤慨していた。
ユリエルに渇を入れられたガーディアン達は気合を入れ、再度ユーマとマスカーレイドに飛び掛っていった。
ユーマ達に立ち向かうガーディアン達にユリエルは眉根を寄せ、戦う様子を眺めていた。
「私も、貴方に負けるつもりはありません」
扉を開きながらセンリがユリエルに近付くと、ほくそ笑んで懐に手を伸ばした。
「こっちの台詞だ……」
柄には三日月のような形に湾曲する手の甲を覆う金属板は美しい装飾が施され、鋭さの切っ先と、美しい湾曲を併せ持つレイピアをセンリに向けた。
素早い動きのユリエルはセンリに鞭を振るう隙を与えず、身体を突き刺そうとどんどん間合いをつめて来る。
「しかしガーディアンともあろう方々が、ニ人に対して複数で向かって行くのは……、どうかと思いますね。そんな事をしなければ、勝てないのでしょうか」
涼しい顔のセンリはレイピアをかわしながらユーマを一瞥し、ユリエルを見て口の端を上げた。
「美咲のような弱い者をいくら気に入らないからといって消そうと言うのは、傲慢甚だしいですよ。単に弱い者苛めをしたかったのですか?」
嘲笑うようなセンリの態度にユリエルは一瞬動きを止め、歯を食いしばった。
「煩い!黙れ!誇り高いガーディアンを侮辱するな!」
「卑怯な事をするのが、ガーディアンの仕事でしたか?」
「弱い者など、この国には不要!塵を掃除するのは当たり前だ!」
息を荒げ怒りで顔を歪めるユリエルは、センリに怒声を浴びせた。
怒りで我を忘れていたユリエルの動きは無駄なものが多く、いつもの力を発揮できず息だけがどんどん上がって行く。
怒れるユリエルを気にも留めないセンリは、距離を保つと鞭を振るった。
「では、こちらの番です」
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