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道化の国
サファイア


店に着くとセンリは扉を開け、前回と同様に店内へ美咲を先に通した。

美咲に続いて店に入ったセンリは真っ直ぐにカウンターへ向かい、そこに用意されていた長細い箱を持ち上げて蓋を開け、中身を確認する。


「美咲、どうですか?」


光る銀色の鎖の中央には小さな桃色の輝きがあり、その隣には深い青い石が付いている。
センリに渡された箱の中を見ていた美咲は、満足そうに吐息を吐いた。


「素敵……。でもこの石は選んでないよ、どうして?センリが付けたの?」

「この石ですか?これはユーマの話を聞いて、すぐに頼みました。この青はサファイアですよ、魔よけです」


そこまで心配なのかと少し不安になる美咲だが、真面目な顔で語ったセンリが何処かおかしくて微笑した。


「すごく綺麗、ありがとうセンリ。大事にするね」

「今付けて行きましょう、貸してください」


美咲の持っていた箱からネックレスを取り、美咲の首にかける。


「こちらを向いて。」

「どう?似合う?」

「えぇ、とても似合います。可愛いですよ、さぁ帰りましょうか。」


ニコニコしながらセンリは、美咲の肩を抱き触れるだけの口付けをする。



「うん……ってお金は?払わなくて良いの?」

「私は払わなくても良いのですよ」

「ええ!?どうして?」

「この国最大の娯楽、サーカスの団員だからです」


目を細め、美咲を見下ろすセンリは嬉しそうに微笑んだ。


「サーカスの団員だったの!?……サーカスって空中ブランコとかのサーカス?」

「はい、私は猛獣使いです。この国でサーカスの団員はとても重宝されてまして、サーカス開催時に仕事をこなせば、全て無料で生活が出来ます」

「猛獣使い……私も見てみたい!」


瞳を輝かせる美咲に対して、センリは顔を曇らせ瞳を伏せた。


「……残念ながら、それは出来ません。私が仕事中では貴女を守る事はほぼ不可能です。何かあっては困りますから……」


寂しそうに視線を落とすセンリに、美咲は言葉が出ないでいた。


「……そう、だね。この間だってユーマにあんな事されたんだものね。センリの居ない所で一人で居られないものね……」

「すみませんね。本当は見せてあげたいのですが……、仕事には必ず出なくてはいけませんから。美咲を誰にも触れさせたくないのです。……私の我侭ですね」

「ううん、いいの。あんな怖い思いはしたくないし、仕事の時はお留守番してる」

「お利口ですね、美咲」






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