道化の国
集う
瞳に怒りの炎を宿し、センリはユリエルを探しに向かった。
その途中、マスカーレイドが見知らぬ女の肩を抱きながら歩いていた。
「センリどうしたんだ?何だか怒ってるみたいだけど」
「貴方には関係ありません」
隣にいるユーマに聞いたマスカーレイドだが、ユーマが答えるより先にセンリが一蹴し、先を急いだ。
ただならぬセンリにマスカーレイドは纏わりつく女を引き剥がすと、手を振りながら微笑んだ。
「君はもう良いよ」
「ちょっと……、会ったばかりじゃない!」
憤りを隠せない女はマスカーレイドに食ってかかり、負けじと腕を引き寄せた。
「俺の邪魔をするの?」
「……え」
マスカーレイドから静かに笑みが消え、柔らかな口調とは相反する仮面の下の瞳は酷く冷たく、女は身体を凍り付かせた。
微かな苛立ちを纏うマスカーレイドに気付き、いつもと違う様に恐れを抱き、女は手を離した。
「じゃあね」
マスカーレイドは佇む女を残し、センリの後を追った。
「なぁ、どうしたんだ?」
足早に進むセンリの隣りを歩き、マスカーレイドは不思議そうな顔をする。
「先ほどの女性はどうしました」
「ん?アレはバイバイしてきたよ」
「そのうちに国中の女性に嫌われて、誰からも相手をしてもらえなくなりますよ」
「心配してくれて、ありがとう」
蔑む様な目付きでニヤつくマスカーレイドを一瞥すると、センリは歩く速度を速めた。
「だから何で怒ってるの?何かあった?」
窺うようにセンリを覗き込めば、何かを思い出したようにセンリの怒りの色が濃くなる。
センリはマスカーレイドに目もくれず、真っ直ぐ前を見据えたまま口を開いた。
「過激派のガーディアンが、美咲を手にかけようとしました。ですから、少し話し合いを……」
「話し合い?センリが話し合い?無理でしょ。美咲が関わっているのに、それだけじゃ済まないでしょ」
茶化すような言い方のマスカーレイドは目を見開き、緩む口元を手で隠した。
「別にマスカーレイドに来て欲しいとは、言っていません。無暗に殺戮を繰り返す輩だけを取締っていれば良いものを、美咲の首に痕を残すほど強く締め上げました。そのお礼くらいはするかもしれませんが……、私は話し合いをするつもりです」
「ふぅん……。って誰も行かないって言ってないじゃん、俺も手伝うよ」
「……好きにしてください」
マスカーレイドを見ずにセンリは苛立つ気持ちを足早に歩く足に込め、過激派のガーディアンが集まるBARへと向かった。
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