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道化の国
夜陰の森4



美咲の豹変振りに驚いていたマリカ達と同様に、センリはその場から動けないでいた。
それこそ美咲からの辛辣な言葉に固まるセンリにすら、言葉を掛けられず少しの静寂が夜陰の森を包む。


「……美咲、美咲を追いかけなくては……」


センリから漸く出た言葉は、美咲の事。
そのたどたどしい台詞に、マリカ達はセンリが痛々しく感じられ、動かない身体に鞭を打ってマリカが口を開いた。


「そ、そうね、早く追いかけなくちゃ……。センリはフィールドに……戻ってる?」

「私も……探します。例え嫌われていようと、美咲を守るのが私の責務です。私の光は自分で守らなくては……」


重い足を引きずるようにセンリは夜陰の森の出口を目指し歩きは始めると、マリカは後を追うように森を出て行った。

センリの頭の中には、泣き叫び自分を罵倒する美咲の顔が張り付いていて離れない。
悲痛な面持ちで、センリは顔を歪めた。


「美咲……」


夜陰の森の端に、センリ達の動向を見ていた男が一人。
森から怒りを露にした美咲が飛び出して来たのを見つけると、男は強い眼差しを向けた。


「名うてばかりの中に、弱者が一匹……」


森の闇に溶け込む膝まである長い青藍のコートを翻し、美咲の後を追った。


「守ってもらうだけのそんな愚かな存在は許せない。――排除されるべき人間だ」


センリ達に気配を悟られぬようにしながらも、眼光を鋭くさせている。


「誇り高き道化の国に、弱い奴は必要ない。今、俺が引導を渡してやる。レフトナント・ジェネラルの俺が、直接葬ってやる」




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あきゅろす。
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