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道化の国
夜陰の森3



「これ、俺の知り合いに研究してる変わり者がいる。どっかで見たことあると思ったら、たぶんこれだよな」

「ユーマ、それは本当ですか?」

「よくわかんねーけど……、この国に咲く花ってこれだけなんだろ?」


花房を触るユーマは、センリに視線を向け確認する。


「現段階で知られているのは、ジェード・バインだけです」

「仕方ねぇから、俺がそいつの所に行って話し聞いてきてやるよ。何か方法があるだろーし、美咲がそんなんじゃ何処にも遊びに行けねぇしな」

「出来るだけ早めに……、お願いします」


それからユーマはその場を駆け抜け、夜陰の森を立ち去った。

ユーマを見送ると、センリは憎らしげにジェード・バインを睨んだ。

大きく垂れ下がる蒼い花。
センリを嘲笑うように見下ろすその姿に、苛立ちを掻き立たせられる。


「マリカ、美咲を少しの間お願いします」


暴れる美咲をマリカに託し、センリは懐から鞭をスルリと出した。


「この様な花があるから……」


センリはそう呟くと、鞭を振るい蒼い花を散らせる。
光を放ち花の一房が辺りを舞い落ちる中、マリカに拘束され呆然とその様子を眺める美咲が唇を震わせた。


「止めて!ジェード・バインに何をするの!?」

「このような花は、この国には不必要だからです。これは私が処分します」

「触らないで!センリ酷いよ……、ジェード・バイン目茶苦茶にした……」


普段聞くことのない大きな声で叫び涙を流す美咲に心惑わされそうになるが、センリは心を鬼にしてジェード・バインに手を振り上げた。

その時パシンと乾いた音が響き、美咲はマリカの手を払い除けて憎しみの瞳でセンリを睨むと、振り上げたセンリの手が一瞬止めて視線を美咲に向けた。
センリの鞭によって払い落とされた花房を拾い上げ、美咲は顔面蒼白にしてセンリを刺すような視線できつく睨んだ。


「センリなんて大嫌い!顔も見たくない!」

「美咲……」


いくら魅入られたからと言って、美咲からの言葉はセンリの心に矢のように突き刺さり。

見えない傷から血は流れずとも、四肢を引き裂かれる思いがし、センリは夜陰の森から出て行く美咲に声をかけれないでいた。








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あきゅろす。
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