道化の国
マスカーレイドの親友
「そう言えば、着物美人とデートするって言ってたのに・・・、随分帰りが早いわね。」
マリカの一言に、マスカーレイドはビクッと身体を揺らし、その台詞を聞こえない振りをしてその場をやり過ごそうとした。
それに気がついたマリカはニヤリと笑い、マスカーレイドに擦り寄った。
「あら、どうしたの?道化の国のプレイボーイさん?」
「・・・倭の国の着物美人は、どうも俺と気が合わなくて。」
はははと、乾いた笑い声でマリカから顔を背け立ち去ろうとするが、マリカに腕を捕まれ、身動きが取れなくなってしまう。
「誰もマスカーレイドに、ついて来なかったんでしょ?」
「――どうしてそれを!?マリカ、もしかして見てた?」
それまで余裕の色を見せていたマスカーレイドが、慌ててマリカに詰め寄った。
「見てないけど、わかるわよ。この国の女は貞操観念が強いのよ、マスカーレイドなんかに簡単に落ちるわけないもの。」
遠慮無しに高笑いのマリカに、マスカーレイドはガックリと肩を落とし、ため息をつく。
「でも良かった、理由があるなら納得する。スランプかと思って、焦ったよ。」
「それで、あんなに早く帰って来ていたんですね。暇だからと、覗きなんてして憂さ晴らしだったのですか?悪い癖ですね。」
「センリまで・・・、少しはヘコんでた友達を労わろうって気持ちはないの?それに、そんな癖ないし。」
マリカとセンリは互いに顔を見合わせてから、ブツブツと愚痴を零すマスカーレイドに視線を向けた。
「私はちゃんとフォローしてあげたじゃない。」
「私は私なりに心配をしたのですよ?そんな癖は良くないと。」
「・・・君達は俺を何だと・・。」
うな垂れるマスカーレイドはため息と共に、小さく呟いた。
「玩具?」
「変態ですか?」
「・・・・君達は本当に、親友だね。」
遠慮のない間柄だからこそ言える言葉は、傷心のマスカーレイドに突き刺さり。
「それにしても、言いすぎだよね。」
損な役回りのマスカーレイドは、また、ため息を零す。
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