[携帯モード] [URL送信]

道化の国
美咲と花月


声を押し殺し、涙を流す花月は肩を震わせている。
美咲は優しく背中を擦りながら、口を開いた。


「……ねぇ、花月は白露が好きなの?」

「……わからない」

「じゃあ、嫌い?」

「嫌いじゃない」


即答する花月は、漸く顔を上げた。

赤くなった瞳には、涙が溜まっており、今にも零れ落ちそうになっている。


「白露に嫌われたと思って、花月は悲しい思いをしてるんでしょう?」

「……わからない。ただ、いつもの白露じゃなくて、怖かった」

「そっか……」

「それに産まれた時からずっと一緒に育てられて、いつも一緒に居るのが当たり前になっていて……、そんな白露を嫌いになるはずがない。そういえば……、結婚がどうのこうのと言っていたら、白露の様子がおかしくなっていったぞ」

「その時の話、詳しく話してくれる?」


花月は頷き、その時の会話や、白露の様子などを克明に美咲に話した。

花月の話を聞いた美咲は、おおよその事が理解できつつあった。
顎に指を当て唸り、花月の知らない花月の気持ちを、本人に説明して良いものかわからず、悩んでいた。

センリやマリカが居れば何かしら良い助言をしてくれるのだろうが、生憎居らず。
また俯いてしまった花月に視線を落とし、どうにかしてあげたいが、どうにも出来ない自分に不甲斐無さを感じていた。

ションボリと肩を落とす花月が小さく見え、美咲は思わず抱きしめる。


「大丈夫。センリが絶対何とかしてくれるから。いつもの白露に、絶対会えるから」

「ありが……とう……」


いつも元気一杯の花月が、こんなにも辛そうにしている姿を見るのが、とても忍びなく。
美咲まで熱い涙が滲んできた。





[*前へ][次へ#]

20/54ページ

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!