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道化の国
センリと白露2

センリは頭の中で色々と思案し、今までの二人の言動を思い出し、記憶を遡る。

回りから見れば二人が互いに信じ合う、一種の絆があるのがわかる。
美咲と花月が捕らわれた時、花月は全く動じていなかった。

それは白露が絶対に来てくれると、信じていたからではないのか。
花月の事を探し出せる自信がある、そういった気持ちがあったからではないか。

だからこそ花月に対する白露の緩い監視や、花月の自由奔放な行動に合点がいく。


「いつもなら、あそこまで慌てて探す事ありませんでしたし、美咲を巻き込んでしまったという焦り、憤りなのですよね」


センリは独り言を小さく零し、行き着く答えは唯一つ。


「私には、白露は花月が好きだとしか見えませんよ」


視線を白露に向け、センリが導き出した答えをぶつけた。


「そういった感情は持ち合わせていない。それに、俺は花月の護衛でしかない。第一、俺達は兄弟同然で育ったんだ。花月はそんな考えなど、全く持ち合わせていないだろう。」


白露の様子がおかしいからといって、あの花月が簡単に泣くなんて考えられない。
白露は意図して自分の気持ちを封じていて、花月は考えが幼いばかりに己の気持ちに気付いていない。

それを思ったセンリは、小さく息を吐いた。


「二人共、不器用ですね」

「俺が不器用?」

「花月が他の誰かのモノになっても、白露は冷静でいられますか?」

「花月が幸せなら、問題ない」

「では、花月が望んでなければ?」


テンポ良く進んでいた会話が一瞬滞り、白露は言葉を詰まらせる。
それを悟られないよう、強気な口調で吐き捨てた。


「それは……、殿が決める事だ。俺が口出しする事じゃない」

「いつまで余裕でいれるのでしょうね」

「……この話はもう終わりだ。」


拳を固く握り締め、白露はその場を立ち去った。

色鮮やかな紫陽花の花が揺れ、その中に紛れて徐々に見えなくなっていった。


「覗きが趣味のマスカーレイド、出て来てください」

「何だ、バレてたんだ。それにたまたまだよ、たまたま」


東屋の後方に咲く黄色が目に眩しい金糸梅から、マスカーレイドがひょっこりと顔を出す。


「白露は気付いていない様でしたけどね」

「センリに色々言われて、焦って気配を気取れなかったんだろ。でも、ハッキリ言えば良いのにな」

「色々としがらみもありますし、それを考えたら白露は余計言えないでいるのでしょう」


二人の気持ちがわかり始めたセンリとマスカーレイド。

枝垂れる金糸梅が風に流されるのを見て、センリは髪を掻き上げ呟いた。


「美咲と花月は、どうしているのでしょうか」




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あきゅろす。
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