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道化の国
センリと白露1


城内を探し回るが白露の姿は見えず、探す当てのないセンリは庭に出向いた。


「何処に行ったのでしょう……」


様々な花が咲き乱れる庭を掻き分け、センリは白露を探す。

凛とした花菖蒲が生い茂る池の畔、紫陽花が群生する中にある小さな東屋。
柱にもたれる白露が、水面を眺めている。


「やっと見つけました……」


白露は葉陰から出て来たセンリを一瞥すると、またすぐに水面に視線を戻した。


「花月が泣いていましたよ」


白露は一瞬顔色を変え、やるせない表情になるが、また表情の無い顔に戻った。
センリはゆっくりと白露に近寄り、東屋に腰を下ろした。


「どうしたのですか、主に心配かけてはいけないでしょう?」

「……俺の事は放っておいてくれ」

「美咲が心配しているのですから、放っておくわけにはいきません」


少し呆れ口調のセンリに、白露はため息をつき俯いた。


「……殿が俺に縁談を持ってきている。それと同時に、花月にも縁談がある。殿は花月にはまだ話はしていないが……、近いうちに話すだろうな」

「貴方は、その縁談を受けるのですか?」


頭を垂れた白露は何も言わず、押し黙ってしまう。
少しの沈黙の後ゆっくりと顔を上げ、揺れる花菖蒲を悲しい瞳で見つめる。


「縁談は断るつもりだ。俺は誰とも添い遂げるつもりはない」

「縁談を断る事に対して、花月の父親に負い目でも感じているのですか?」


古い付き合いのセンリは、白露の生い立ちなど色々耳にしていて。
花月の父親を、本当の父のように慕っていたのは知っていた。

しかし花月にまで心配かけるほど、態度に表すのはおかしいと感じ、優しく問いかける。


「……」

「それだけじゃ無いようですね。……花月の事、なのではないですか?」


センリは白露の視線の先を見つめ、静かに白露の言葉を待つ。


「……違う、花月は関係ない」


風が吹き、水面に小波たつ。
木々から若葉が落ち水面に浮かべば、それが波紋となる。
まるで白露の心を映した、重苦しい想いが広がってゆくように。




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