道化の国
悪魔の囁き
「やぁ、花月。招待してくれて嬉しいよ」
先頭を歩いていたマスカーレイドは、手を振りながら花月達に近寄る。
「お前を招待したつもりはなーいっ!……センリめ、あんなにでかでかと書き記したモノを無視して……、クソッ。美咲だけを招待するべきだった」
「冗談じゃありません。美咲だけでなら、こちらに来させませんでしたよ」
花月は悔しそうにセンリを睨み、親指を食いちぎらんばかりにギリギリと噛んだ。
「花月、落ち着け。ほら、指を咥えるのは止めろ、みっともない」
「咥えてるのではない!噛んでいるんだ!……どいつもこいつも。美咲、早く行くぞ!センリのアホなんか放って、わたくし達だけで行くぞ!」
花月は美咲の手を取り、センリ達からズンズン離れてゆく。
「勝手に美咲を連れ歩かないでください」
「花月、何処へ行く」
先を歩く花月にセンリと白露は声を掛け、ついて行く。
「着物が汚れたから、着替えてくる!……美咲も着物着るか?」
背を向けたま花月は力強く歩き大きな声を上げ田かと思うと、美咲とチラリと見て伺うように優しい声で話した。
「うん、着たい!じゃあ、マリカも良い?楽しみにしてたから」
「構わないぞ。マリカー!着物に着替えるぞー、早く来ーい」
二人は振り向きマリカを手招きする。
辺りを眺めながらゆっくりと歩いていたマリカは、花月の声に反応した途端に瞳を輝かせ駆け出した。
「早く行くわよ!」
花月と美咲の横を通り過ぎると同時に、二人の手を取り走り去ってゆく。
「マリカ……待て……、身体の向きが逆……」
「きゃあああっ!」
美咲は足をもつれさせながらマリカにしがみつき、花月はそれでも軽快な足取りでマリカに引っ張られて行った。
「……あ」
センリがマリカを止める間もなく遥か彼方へと行ってしまい、取り残されたセンリ達は互いに顔を見合わせる。
「私達はどうしますか?」
「センリ達も着物に着替えるか?」
白露は腕組をしてそれぞれの様子を窺った。
「私ですか……、私は遠慮し」
「美咲が惚れ直すかもよ?」
「白露、私にも着物を用意してください」
悪魔の囁きならぬ、マスカーレイドの囁きによって、センリも着物に着替える事になった。
「俺一人で着物は嫌だし」
着物美人と着物デートしたいじゃん、と、マスカーレイドは一人ほくそ笑んでいた。
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