「思ったんだけど……」 「どうしました?」 久しくにフィールド外を歩く美咲は、ふと思った疑問をセンリに問う。 「国を見て回ったところで、私に縁のある人しか瞳に映らないんでしょう?」 「そうです」 「誰も居ない所を見て回ってもどうかな……と、思って……」 静かに聞いていたセンリは一呼吸おき、美咲に微笑んだ。 「……美咲は此処に来てすぐに私と出逢い、フィールドに行きましたでしょう?まだまだ住人は沢山いますから、縁のある人がいるかもしれませんよ」 美咲に縁のある人に、あまり出逢いたくはないんですけどね、と続いたセンリの小さな呟きは美咲の耳には届いていない。 「センリ何か言った?」 「……いいえ、さぁ行きましょう」 訝しげ(いぶかしげ)にしながらも、歩く街には天上一杯の空が二人を迎えている。 広い空間に大きな噴水があり、落ちる水の音が辺りに響いていた。 天上の空のぼんやりとした明りが僅かに下りていて、地上の風景は薄暗い色を奏でる。 その暗さを払拭するランプの光が、柔らかくあちらこちらに燈っている。 「とても不思議な空間。少し暗いせいなのか、本当……不思議ね」 風や木々はないが、緑に囲まれ森林浴をしているような、清清しい気持ちに美咲は満たされる。 「この国自体巨大な建築物なのです。独特な雰囲気は道化の国の特色、外も内も一つの世界。様々な要因が折り重なって、住人にとって心地好い空気を作り出す……難しいですか?」 「……うん」 苦笑いで答える美咲。 久しぶりにセンリのフィールドから出てみたものの、相変わらずのパラレルワールドっぷりに感嘆してしまう。 「そんな事はどうでも良いですから。さぁ、行きますよ」 どうでも良くないと思いながらも、何も言わずセンリについて行く美咲。 絡められた手が離れないように、きつく握り返して。 |