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道化の国
瑠璃紺の蝶


淡い蝋燭の灯が燈る部屋。
瑠璃紺の蝶が仄明るい光の粒を纏ながら舞い降り、机の上で弾けたと思うと姿を消した。


「手紙ですね」


机の上には蝶が残した紫の光と共に、封筒が一通あった。
興味深げに美咲は机に近寄る。


「センリ?」


いつも来る手紙とは様子が違う桔梗の花が描かれた封筒を手に、センリは立ち尽くしていた。

封も切らず、ただその描かれた絵をジッとしかめた顔で見ている。

わけがわからず、美咲は封筒とセンリを交互に見る。
そんな美咲を見てセンリは苦笑いを零し、小さくため息をついた。


「この封書にある桔梗の花は、倭の国の花、そしてこの封印は折れ桔梗……、倭の国の紋です」


センリは封筒を指差し、美咲に説明をした。
美咲は頷き、封筒を開けるのをわくわくした様子で待つ。


「……やはり花月からですね」

「本当!?花月は何て書いてきたの?」


美咲はセンリの手元を覗き込み、文章を読み始める。


「遊びに来て?……遊びに行って良いの!?ね、センリ!行って良いの?」

「……えぇ。ご丁寧に招待状まで一緒では、行かなくては非礼になりますね」


美咲が喜ぶ顔を見るのは嬉しいが、それが自分以外の事で喜んでいるので、なんとも複雑な気持ちになる。


「センリ、行こう!?私、凄く嬉しい!センリも行くよね……?」

「美咲一人でなんて行かせませんよ、勿論私も行きます。……注意書きがありますね」

「注意書き?」


最初の文面しか読んでいなかった美咲は、センリの視線の先を見る。
そこにはひときわ大きく、“マスカーレイドだけは連れて来るな”の文字があった。


「これは暗に“連れて来い”……と言う意味なのでしょうか」

「でも、花月は本当にマスカーレイドが苦手に見えたよ?」


センリは手を口元に当ててなにやら考え込んでしまい、押し黙ってしまう。
しかし少しすると、企む笑いを浮かべた。


「マスカーレイドも連れて行きましょう。美咲は皆と一緒に行った方が、楽しいと思いませんか?」

「うん……、けど、連れて来るなって……、良いのかな?」

「構いません、見なかった事にしますから」


皆と行けるのが嬉しい美咲は、花月に悪いとは思いながらも初めて行く倭の国を思い描く。
簡単に見なかった事にしてしまうセンリを気にしつつも、やはり楽しみな気持ちが大きく、美咲は身体をうずうずさせた。








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