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道化の国
捜索


飲み物を持ち、席に戻った白露。
そこはもぬけの殻で、花月どころか美咲まで一緒に居なくなっていた。


「あ……の馬鹿っ!」


白露は持っていた物を放り捨て、踵を返した。
センリの大事な希望の光を預かった以上、美咲に危険が及んではと焦る気持ちを抑え、必死に冷静さを取り戻そうとする。
勿論花月も心配ではあるが、一通りの武術を仕込んでおいたので美咲ほどの心配はしていなかった。

道化の国での希望の光の重要性は、倭の国にまで聞こえてくる話であり、センリがどれだけ美咲の事を想っているかは容易に想像がついた。
何処に行ったかなど皆目見当のつかない白露は、ステージ裏のセンリに会いに行った。


「センリ!」

「白露どうしたんです、血相を変えて」


ステージを終えたセンリはシルクハットを脱ぎ、額に光る汗を軽く手で拭った。
先にステージを終えていたマスカーレイドは椅子に腰をかけていて、白露の慌てように驚く。

息を切らせながら喋る白露に、センリ達は訝しげにした。

花月や美咲の側に居なくてはいけない白露が、単身で自分に会いに来る……。
センリはピンときて、表情を一変させた。


「美咲に何かありましたか?」

「すまない……、ちょっと目を離した隙にやられた。たぶん花月が美咲を唆したと思う」

「おいおい、花月はまた脱走したのか。……っておいセンリ!」


マスカーレイドが話終わるか終わらないかのうちに、センリは出口に向かって走り出した。
センリが走り出すと、白露も後を追うように走り出した。


「何処に行ったかは、全く見当がつかないんだ」

「それは私も同じ事ですが、立ち止まっていても何の解決にもなりません。とりあえず虱潰しに探します」


センリ達は望みを持ちながらあちこちを探すが、二人の影形もなく。


「美咲……、貴女は無事ですか……」


センリの悲痛な呟きは、自分の胸に突き刺さる様に感じられた。
白露に任せておけば大丈夫だと、どこか気を緩めていた己に怒りがこみ上げる。

どちらともなく足が止まり、二人は辺りを伺った。


「すまないセンリ、花月は希望の光の重大さがわかっていないのかもしれない。でなければ、あんな行動は取れるはずがない」

「謝罪はしないでください、私も悪かったのですから。私が美咲の願いを聞き届けなければ……、フィールドに閉じ込めておけば……」

「それが出来ないから、俺に美咲を託したんだろう?……こんな所で気弱になっている場合じゃない。早く探そう」


沈んだ表情のセンリに、白露は肩を叩き、また二人は走り出した。


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あきゅろす。
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