[携帯モード] [URL送信]

道化の国
囚われた花


「――ンッ!?」


背後から延びた手に口を塞がれた美咲。
声を発する事が出来ず、あてがわれた掌を剥がそうと必死にもがく。


「美咲!お前等何をする!」


異変に気付いた花月が振り向けば、三人の男達がいて、その中の一人が美咲を腕にしっかりと抱き留めている。
帯びに刺していた鉄扇を振り裁き、花月は男達を睨む。

黒く染まる鉄の短冊を幾重にも貼った鉄扇は鈍い光を放ち、花月はそれを男達に向け構えた。


「お嬢チャンも大人しく来てもらおうか。……でないと、この娘だけでも良いんだけどな」


美咲を捕らえた男は、首筋に唇を押し当てる。


「んんんーー!んぐっ!」


身を捩って男から身体を離そうとするが、力で男に敵うわけもなく。
美咲を盾に取られた花月は苦虫を噛み潰した様な顔をし、男達に向けていた鉄扇をゆっくりと下げてそれを閉じた。


「美咲には手を出すな、それが条件だ。それなら、わたくしは素直に従おう」

「良いぜ、この娘には手を出さない。おい、お前等」


美咲を捕らえる男が合図を出すと花月の両脇に二人の男が立ち、抱える様にしてその場を立った。


少し歩き、一軒のお店の中に入る。
そこはシガー・バーで、葉巻のきつい香りが辺りに漂っていた。


「そこのロープで縛り上げろ。特にこのお嬢チャンは、念入りにな。あんな物騒なモノ持ってるんだもんなぁ」


美咲を人質に取られてしまい手も足も出せない花月は、男達にされるがままにしていた。
男の腕にガッチリと押さえ込まれた花月は縛られて床に転がされ、美咲も同様に縛り上げられた。

花月は怒りを抑えるため、男の顔を見ないように隣にいる美咲に目線を合わせた。


「美咲すまない。わたくしがお前を巻き込んでしまってしまったから、こんな目に合わせてしまった」

「ううん、大丈夫。きっとセンリが助けに来てくれる。白露だって来てくれる」

「……白露達、間に合えば良いのだが」


小声で話をする美咲達を、男達は上からニヤニヤと笑いながら見る。

嫌な気配がし、美咲は男達に恐る恐る視線を向けた。
にやけた顔の男が見下ろしていて、これから何が起こるのかと思うと血の気が引く。


センリに会いたい。早く来て欲しい。

美咲はセンリにありったけの想いを、心で叫んだ。




[*前へ][次へ#]

17/26ページ

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!